確かにあれは“恋”だった___.

夢 叶

第1話  悲恋

「終わりにしよう、私たち」




彼女はそう泣きながら微笑んだ。

きっと彼女なりに辛かったんだろう。苦しかったんだろう。

それなのに、俺は彼女を抱きしめることができなかった…



俺たちは表現者、エンターテイナーだ。

役者として、さらなる高みを目指していくためには、自分の私情など捨てるべきだ。今は後悔しても、きっと未来では笑っている。そう信じて。


この別れは、きっと俺たちをさらなる大きなステージへ上がらせてくれることだろう。そうではなくとも、今はそう願いたい。


彼女もたくさん悩んだことだろう。こんなにも目を真っ赤に腫らしてるのだから___



別れの時間が迫る度に、彼女が好きだと思う気持ちが溢れてくる。離したくない。離れたくない。このまま彼女と一緒に、この真っ暗な夜の中へ逃げ出してしまいたい。


だが、そんなことできない、俺は臆病者だ。彼女よりも未来をとる。彼女と共に……





時計の針が0時を回る。別れの時間だ。

さぁ早く。心奥底にある言葉を言うんだ、、早く…早く…。

そう思っても言葉は、声はでない。



すると彼女は俺の目を見て、


「終わりにしよう、私たち」

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