ヤンデレストーカー幼馴染が出来るまで……

シグオ

第1話 柊 里緒菜(ひいらぎ りおな)

 小学三年生に進級して間もなくの頃、火事で家が全焼した。

 そこで私は両親と弟を亡くし、かろうじて助かった私も左腕から頬にかけて酷い火傷を負ってしまった。


 まだ幼かった私にはその事実はとうてい受け入れることができず、毎晩のように悪夢にうなされ、鏡を見るたびに絶望した。


 周囲はそんな私に好奇と憐憫の目を向け、腫物を扱うかのように接してくる。

 私を可愛いと褒めはやしていた周りの大人や友達も、気遣ってなのか、気持ち悪がってなのか、最後は私から離れていった。

 結局私に残ったのは、残酷な記憶と、醜い傷跡だけ。

 ただただ苦痛だった。

 周りの人間は普段と変わらない日常を送っているのに、まるで私だけあの日を境に別の世界を生きているかのような錯覚を覚えてしまう。

 今にして思えば私が歪んでしまったのはその時だったのかもしれない。

 精神的に限界が来ていた頃、私は一人、夕方の教室で呟く。


「……もう死んじゃいたい」


 口をついてでたその言葉は、誰に拾われるでもなく、ただ夕暮れと共に消えるだけのように思われた———


 だけど……


「……えっと、ごめん。こういう時何て言っていいか分からなくて……」


 思いもよらない返答に私は後ろを振り返る。

 一人だと思っていた教室にはもう一人いたらしい。

 見れば窓際の席で一人、本を読んでいる男子がいた。

 私が初めて彼———泉谷凪いずみや なぎと言葉を交わしたのはこの時だった。

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