ゼロテン
門前払 勝無
雲に煙
煙草の煙がビル風に渦を巻きながら消えてゆくー。
一息ごとに今までのトラウマを乗せて吐くと胸の中が整理していける。投げやりで諦めのようにも思えて俺らしくも無い、いや、らしくなど元々無いのである。絡み合う己の思考に苦笑して煙を再び吐くー。
女絡みで分岐点の選択肢を間違えてきた。間違えさせてきたと言うべきか…知り合った女達は皆美しく素敵な女達であった。俺が彼女達に無駄な時間を使わせてしまっただけである。
慰めてほしいとか優しさとか儚さとか、永遠だとか別れとかその時の感情に流されてそれに乗ったつもりで落っこちて、それの繰り返して此処に立っている。
13階の屋上から下を見ると誰が捨てたか解らないゴミが谷間に散乱している。俺が逝くに相応しい着地点である。
「あと一本かぁ」
缶コーヒーを飲み干して吸い殻を入れる。
煙草を咥えて淵に立ち青空に流れる雲に微笑むー。
「良い日だなぁ」
空へと続く階段へ一歩踏み出した……。
ドサッ。
おわり
ゼロテン 門前払 勝無 @kaburemono
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