24日目:哀愁漂う「おとたん」と「史たん」への格言

 釈放の日の朝である。

 昨晩のあれこれのせいで、最終日のスタートはまぁ眠い。

 あれこれというが、あった内容は前回の通り。

 結局もろもろの処置を終えて、眠りについたのが2時過ぎだっただろうか(前職のことを考えるとそう遅い時間というわけでもない、か?とはいえ、慣れとは恐ろしいもので、2時という何でもない時間なはずも十分に遅く感じるから不思議である。)?お陰でまぁ眠い。

 しかも、今日は宿を後にする関係上、講義前までに準備を終えねばならない。結果、仮眠もできず、出だしは散々と言わざるを得ない状態であった。まぁ、とはいえ、朝風呂と満腹の朝食は欠かしてないんだけどね。

 

 さて、少し話は変わるが、今朝はここ数日途絶えていた「おかたん」メールが久しぶりに届いていた。曰く、

 『 おはよ!今日で最後だね?「史たん」と一緒に待ってるよ!&可愛い絵文字(なんか犬だかタヌキだかよくわからない、白い獣がウィンクしながら親指を突き立てて、ぐっ!とやっているLI〇Eの絵文字)』

 とのこと。

 『 おや?今日は遅くなるからお迎えに行く予定はない(「ボク」はこの街に馴染みのない「おかたん」に気を使って、運転はまだ早いかなぁとの思いから、アッシーを買って出ているいい旦那さんなのだ。)のだが?まさか忘れてる?』

等と思いつつも、

 『 へいへい、頑張りますよ~』

 と返しておく。

 実際、可愛いお嫁さん(?)から、待ってるよのメールが来たら、世の愛妻家の皆さんはテンションが上がるのかもしれない、が、この日の「ボク」、、、いや、「ボク」はもとより通常営業でそんなことはない。

 というか、久しぶりに「史たん」と「おかたん」に会えるワクワクよりも、寝れない日々へ逆戻りする鬱々感の方が遥かに勝っている。

 『 あー憂鬱だなぁ。』

 と、一人考え事をしながら講義が始まるのを今や遅しと、いやもっと遅くなれと待っていると、後ろの席の男性同期同士の話が耳に飛び込んでくる。曰く、

 『 いや~長かった、長かった。たった一週間とはいえ、こんな陸の孤島で生活していると、何とも言えない開放感があるよねぇ。なんというか、出所の気分?』

 『 あー確かに。3日くらいならいいけど、丸一週間ともなると最早出所だよね』

 『 確かに確かに。』

 だそうな。いや、楽しそうで何よりである。

 そしてなにより、監獄のような一週間の中で唯一無二の囚人メイトを得られたようで、、、おじさんとしては羨望の眼差しを向けざるを得ない(いや、実際は一切振り返ることはないのだが。なぜって?目が合ったら気まずいじゃん?)。

だが、おじさん、少し不安になってしまうよ。君たちはそもそも刑務所なぞ入ったことはなかろう(まぁ、そもそも入っていたらここにいないか)?そんな想像ばかりの話をしていて何が楽しいのだ?そして、たった一週間の缶詰生活如きに、どれだけの解放感を感じているのだろうか?君らの人生はまだ長い。結婚、出産、育児に転勤etc.今後の人生考えると、監獄と感じる生活はも~っと長く、種類も豊富だぞ~?こんなさも天国のような一週間を監獄と感じるような精神性で、果たしてそれらを乗り越えられるのかな?挫折しないように今からでも精神の錬磨に励みたまえ!これはおじさんからのアドバイスだぞ!

 なぁんて、他愛のないものほんの妄想に浸っていると、どうやら始業の時間となる。

 最終日に向けた「ボク」の意気込みは一つ、

 『 あ~温泉が終わってしまう~』

 である。


 そんなこんなで、講義は恙なく進行され、「ボク」も持ち前の適当だけどなんかできる人ぽい受け答えを駆使して、無難に講義時間は過ぎていく。

途中、昼食休憩も挟んだわけだが、結局「史たん」自慢ができる、、、こともなく。というか、昼食直前に事務局からのお知らせで、

 『 皆さんの親睦も深まってきたと思いますので、最終日は自由席で!』

 なぁんて、気を利かせてくれるものだから、結局ボッチで過ごす最後の昼食と相成りました。ま、それはそれでいいんだけどね。マイペースでご飯食べれるし。

 しかし、この合宿期間、講義の内容は頭に入っているかどうか不明も不明で、かつほぼほぼボッチではあったが、それ以上の収穫はあった。

 そう「史たん」の可愛さが認められたことである。

 今までは、

 『 身内贔屓の賛辞なんかなぁ?』

 と思わなくないことも多々あったが、「史たん」のブロマイドを披露した時のFさんの嬌声。これは親ばか、贔屓目抜きにしても、「史たん」の可愛さが通用するという証左であろう。

 流石は我が子!小さい時の可愛さは間違いなく「ボク」譲りである。というか、ほぼほぼ「ボク」のまんまである。

 かくいう、「ボク」だって小さい頃は、髪を結ったりしようもんなら、女の子に間違えられるくらいには中世的で可愛かった(あくまで、かった、ね。)と評判なのである。

 ただ、残念ながら、その後はまぁ鳴かず飛ばずだった。背も伸びず、なぜか筋肉質になりやすい血筋(細マッチョ系ではなく、プンプンになる方)も相まってか、成人してからは「ぽっちゃりちびっ子」の名をほしいままにしているところである。結局、実父である「じじちゃん」に身長で勝つこともできず、、、と、もう「ボク」の話はよかろう。

 だが、「史たん」よ、聞きなさい。これだけは伝えておかねばならない。

 『 「史たん」よ、過度な筋トレはやめておきなさい!「おとたん」の轍を踏みたくはなかろう?な?「おとたん」との約束だぞ?』

 と、そんな楽しい妄想昼食を過ごしつつ、気が付けば帰りの時間となるのであった。

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