第3話 参る

一年も経つと、看護師は次々に辞めて行った。

老人の施設は重労働な割に給料や時給が低い。

私の友達も主任で入ったが、やってられないと

辞めてしまった。

正直、腰が痛いし、急性期病院なら看護師同士

阿吽の呼吸でやれた事ができない。

私もウンザリしていたが、独身の友達みたいに簡単に次が見つかる訳じゃない。


看護師不足になるとお昼ご飯も休憩も全く取れ

ず、定時で上がれなくなって来た。


その頃、子供の学童や学校のPTA、子供会などの役員が次々に舞い込んでくる。

夜の会議、土日は行事やその準備で潰れていく。


30代とは違い、疲れが一晩寝てもとれない。

ドリンク剤を飲んでもダメ。


急に昔に治した虫歯のところが痛みだし

化膿してきた。

どこかに治療に行かなきゃ。

これまでは働いてた病院の歯科で診てもらっていたが、そこは簡単に予約がとれない。

ふと、訪問看護をしてた時に患者さんから

優しい先生がいる歯科の話を思い出した。


「もしもし、あのう、初めてなんですが。

歯が痛くて膿んでいるんですが、、。」


それだけ言うと受付の人は、すぐ

歯科医師に代わってくれた。

状態を伝えると、すぐに診てくれるという。


有難い。しかも、仕事終わりでもいいと言うし。


これが運命の出会いになるとは全く予想していなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る