第2話 職場

ナミコは元々、動きまわる事が好きだった。

それと、介護士の若い子が面白くて、

仕事はすぐに慣れた。


ナミコが驚いたのは他の看護師のあまりの

経験の無さと知識も技術の低さ。

そして、介護の若い子達をこきつかう態度。


半年も経たないうちに、ナミコは看護師師長から、あなたがいてくれると安心だわ。

と言われるようになり、それは、理事長にも伝わり、パートだけれど、特別に破格のボーナスをもらうようになった。


介護士の子達からは

ナミコーー!と呼び捨てされるくらいになっていた。


この辺りからナミコは看護師達には

もっとしっかりして欲しいと思うようになった。

ナミコがパートになったのは、残業は出来ないからだから。

子供を迎えに行かなきゃならない。


しかし、正職の看護師が頼りにならないのが露呈して、介護士の子達が担当以外の病棟からも

利用者さんを診に来てて欲しいと言うようになったから。


「ネェ、お願い。ナミコ来てよう。

杉本さんがね、ブツブツできてるんだよね。」


「あのさ、私は四階の担当なのよ。

5階の看護師に診てもらってよー。

こっちも忙しいのよー。」


「だってさ、言っても全然無視すんだもん。

いつもそうだよ。机に座って動かないんだよ!」


ふーん、またか、、。

給料泥棒だわ。

利用者さんの事も心配だし、、。


「ごめーん!

今さ、5階から電話あったのよ。

診に行ってくるけど大丈夫?」


「いいよー、ナミコ!行ってやってよー。

困ってるんだよ。」


「じゃあ、何かあったらピッチ鳴らしてね。」


5階のステーションには担当看護師が椅子にどっかり座り、のんびりと記録?してる。


「ちょっと、いたの?いないかと思ったわ。

杉本さんの皮膚の報告あったわよね!

見た?」


「あっ、コレ終わったら行こうと思ったのよ」


「ふーん、記録より利用者さんが優先でしょ。

今から見せてもらいに行くから、来て!」


ナミコは処置台をガラガラ引きながらサッサと歩く。その後を慌ててついてくる。


ナミコは杉本さんに声をかけて背中を見せてもらう。

ははん、これね。

「杉本さん、ここ痛くありませんか?」


「うん、実はね、どんどん痛くなってきてるの。ピリピリーってするのよ。」


ナミコは担当看護師に聞く。

「あなたは、これ、何だと思う?」


「このところ蒸し暑いし、アセモだと思うわ。

たいした事じゃないわね。」


「そう、それでとりあえずの処置はどうするつもり?」


「アセモだからステロイド軟膏を塗っとけば治るわね」


「ふーん。

じゃあ、私の見解とは違うわね。

まず、背中の湿疹は身体の正中から半分だけに広がっている。そして、かゆみより痛みがひどくなっている。

その事から帯状疱疹を疑うわね。

帯状疱疹の場合ステロイドは悪化させるから禁忌。抗ウィルス剤を塗って、擦れると痛むからガーゼ保護とするわね。

で、あなたはどうするの?」


「あっ、帯状疱疹かぁ、そういう見方もあるわよね。あーそうそう。」


「じゃあ、私の処置でいきますからね。

それと、今日は医者はいないから明日は

方向しといた方がいいわね。

悪化すれば抗ウィルス剤の点滴しないと

痛みが強くて大変よ。」


ナミコが帰ろうとした時、介護士の子が呼び止めた。


「やっぱり、良かったぁ。アセモって私にも言ってたけど、痛い、痛いって、、。

それも伝えたのよ。」


「うん、あんたは良くやってくれたよぅ。

おかげで杉本さん、悪くならないで済むかもね。あんがとよー。」


こんな事がどんどん起こるとたまらないなぁ。




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