異世界TSサキュバス配信生活~なんやかんややったら現代日本と繋がり、なんやかんやで異世界からの配信が成功してしまった件~
みょん
サキュバスさん配信をする
異世界、それは異なる世界を表す言葉だ。
普通の人々が生きる現代の世界……そこには魔法などと言った超常的力は存在しないし、人以外の言語を喋れる存在も居ない……宇宙人が居るのではないかとまことしやかに囁かれてはいるが、結局はそれも謎のままだ。
もう一度言おう――現代世界に魔法は存在しない……だが人々は異世界という存在を想像の中に求める。
勇者が魔王を倒す物語はアニメや漫画に留まらず、一次創作や二次創作など幅広く多くの人の目に触れている……さて、何度も言うがあくまで異世界という存在は物語や想像の中でしかあり得ない……絶対にあり得ないのである。
だがしかし!
昨今、そんな常識をもしかしたら覆してしまうかもしれない存在が現代に出現し、多くの人の関心を集めていた。
『さあ、今日もやってくよ』
今の世の中、夢のある職業の一つに配信者と呼ばれるものがある。
件の存在はその配信者の一人であり……絶対にあり得ないという可能性、それをもしかしたら存在するかもしれないという考えに置き換えさせてしまったのだ。
『つってもやることそんなにないんだけど。取り敢えずゴブリンの巣にでも行きますかね』
・すげえ……これが異世界なのか!?
・お前ら、いい加減騙されるなって
・いや……でもよ。これってCGにしてはあり得ないレベルだろ!
・異世界……異世界は本当にあったんだ!
・オタク君キモすぎぃ! こんなんに騙されるとか哀れすぎるだろww
・サキュバスさん……えっど
・大丈夫? BANされない?
・仮にこれが高度なCGで、サキュバスさんがコスプレでもどうでも良いわ
爆速で流れるコメント欄もさることながら、モニターの中に映るそれはあまりにも現実離れしており、あまりにも夢のような光景だった。
現代では決して見られないような荒れ地を歩く一人の女性……彼女の背に生える二対の翼は人ならざる者の証――そう、彼女はサキュバスだ。
『にしてもまさか、俺としてもこうやって現代に配信って形で映像を届けられるとは思わなかったんだよなぁ……へへっ、悪くねえ気分だぜ』
サキュバスチャンネル……それは異世界から現代に届くまさかの存在なのだ。
動画投稿主は人ではないサキュバスを名乗る容姿端麗、色気ムンムン……だがどこか男の面影を喋り方から感じさせる女性――そんな彼女が見せてくれる映像には他の人間ではない存在であったり、中世を思わせる建物であったり……或いは現代に存在しない魔法であったりと……とにかくあり得ない映像が流れ続けている。
『お、出てきたな。普通の人間ならともかく、サキュバスだからかあいつら目にハート浮かべてるし』
うへぇと女性は気持ち悪そうな顔をしたが、ひとたび手を翳すと外皮が緑色のゴブリンと呼ばれた者たちは全て……闇に喰われて消えた。
それは確かに魔法……だがやはり、まだCGではないか……或いは合成ではないかと疑う声は止まない……それは仕方のないことだ――だって、現代に魔法やサキュバスなんて存在は居ないのだから。
これはそんな現代の常識をぶち壊す異世界に生きるサキュバスの物語。
なんやかんやで異世界と現代を繋ぐことに成功し、映像限定ではあるが届けることを可能にしたサキュバス(元男)の生き様である!
▽▼
「目を覚ましたらサキュバスだった件について」
サキュバスの女性――元男としての記憶を持つ彼女はそう呟く。
彼女は元々現代の日本に生きていた青年であり、不幸な事故を経験した後に、今を生きる異世界に転生した存在だ。
170ほどの身長と腰まで伸びる真っ黒な髪、血のような赤い瞳と否応にも異性を虜にする抜群のスタイル……かつて男だったため、女の体には違和感を感じていたが既に慣れてしまっていた。
名前はサキア――転生TSサキュバスさんだ。
(異世界転生……まさかこんなことをするとは思わなかったよ)
異世界に転生したのだからやることは多くある……しかも人間ではなくサキュバスに生まれ変わったので、文化の違いや生き方にも多くの変化はあった。
だが……彼女は何故か現代に映像を届けることが出来る魔法が使えたのだ。
それは神から与えられた特典なのか、そもそもサキュバスが持つ夢に干渉する力の応用かは不明だが……とにかくサキアはそんな魔法を使うことが出来た。
(くくっ、いつもいつも反応が面白くてたまらないんだよなぁ……本来、サキュバスは精気を吸うことで快楽を得るだろうが……ぶっちゃけ、俺からすれば配信を通してリスナーが見せる反応だけで絶頂しそうだし)
それはもう普通のサキュバスじゃないんだよ……っと誰かがツッコミそうだ。
サキアの扱う魔法の全容は自分でも分かっていないのだが、現代の配信者のように映像を届けることが出来る……異世界と現代という枠組みを超える不可能を可能にしたそれは正に奇跡と言えるだろう。
ただ、現代から異世界に干渉することは出来ないため……いまだにサキアや彼女が届ける映像全てが嘘っぱちだと思われているがこれに関しては仕方ない。
(だって本来ならあり得ないもんな。異世界なんてのは空想の中だけの話……こうして実際に存在するなんて言う奴は病気と思われてもおかしくないし)
サキアが何を言ったところでこればかりはその人の感じ方次第だ。
だがサキアは紛れもなく生きているサキュバスであり、魔法を通して届けている映像も全て現実のもの……実は、あまりにも現実離れしていながら現実だと断言出来るような映像も残っているため、割と真面目に世界各国の学者たちが事態の究明に追われているとかいないとか。
「ま、サキュバスとしての生もそうだけど……もっとあっちの世界を引っ搔き回してやりたいから頑張るかねぇ」
サキアは悪い笑みを浮かべている。
これから先、もっともっとサキアは現代で有名になることだろう――魔法で映像を届けるだけでなく、今もっとも利用者の多い動画サイトであるFortubeにも何故か登録出来たことからこの配信生活は始まり、チャンネル登録者は開設二ヶ月で五十万人に達しようとしている。
これはまだまだ増える……もっともっとファンもそうだしアンチだってそう、そして本物か偽物かでもっともっと荒れるはずだ。
「楽しいねぇ」
その全てが楽しくて仕方ないと、サキアは嗤った。
もう一度言おう。
これは異世界に生きるTSサキュバスのお話であり、現代すらも巻き込んだ前代未聞の配信生活の幕開けなのだ!
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