ボク、勇者じゃないモン/皇アオの探検日記

月杜円香

第1話  ボク、勇者じゃないモン

「ボク、勇者じゃなモン」


 さっきからそう言ってるのに、この人たちは信じてくれない。


「おかしいなぁ!?あたいが呪文を間違えるはずないのに!!こんなチビが出て来るなんて!!」


 何やら、怪しげなマントを羽織ったお姉さんが言った。


「マーリエ、腕が落ちたんと違うか?」


「この前も、移動に竜を喚ぶと言って馬を喚んでましたからね」


 ゴツイ年長の強面のおじさんと声が非常に低いお兄さんが、金髪の女の子を責めていた。

 女の子といっても、きっと僕よりも年上だろうな。


 ボクには何のことか分からない。

 黙って、成り行きを見ていた。


「だから、あんたは勇者でしょ?それであたいに召喚されたんだ!」


 このお姉さんは、譲らない。


「いいや、確かに力の強さを感じたんだよ!!だからそこを狙って呪文をかけたのに!!なんでこんな、チビが出てくる?」


 ボクは、辺りを見渡して、そこが今ハマってるマイナーなRPGゲーム、《ファイヴ・ストーン》の中の世界に似ていることに気付いたんだ。

 ひと昔の神龍が出てくるようなパクリの様なマイナーなゲームだったから、誰もやっている人はいなかった。

 1人を除いてね……


「そんなの知らないよ~何処かで見たことがあると思ったら、《ファイヴ・ストーン》のゲームの中にソックリなんだ」


「何だよ!!【輝石】のことを知ってるのか!?」


「ボク、ゲームをクリアしてるモン。知ってるよ」


 三人の顔色が変わった。


「やっぱり、お前は勇者だ。さぁ、名前を聞かせて欲しい」


 声の低いお兄さんが、話しかけてきた。


「ボク、すめらぎアオだよ。桜蘭中学の一年B組。友達とゲームの話をしながら、家に帰る途中にフラッとして、気が付いたらここにいたんだ」



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