命の印/ Marca da Vida

Noah92

エピローグ: 貴方への手紙

XX8X年 XXXX

きっと貴方がこの手紙を読んでいるということは、私はもうこの世にはいないのでしょう。

私はこの日記に、この数週間起きた自分の体験談を綴りたいと思う。


私達は新たな文明の始まりに立ち会ってしまったのかもしれない。

事の発端は...


XX89年 9月 X日

一人の赤子が生まれた。

可愛くて元気一杯な男の子だった。


だがその赤子の小さな手首には不可思議な模様、印があった。

私もそこに居合わせた看護婦も医者も違和感を覚えたが、赤子に異常は見られなかった為、誰も気に止めなかった。


また尊い一つの命が生まれた。


その時の私はそんな嬉しい気持ちで一杯だった。


生まれた赤子は翌日には母親の胸元で安らかに家へと帰っていく...はずだった。


XX89年 9月 X日

翌日、赤子が死んだ。

心臓発作だった。


泣き崩れる赤子の親と、私の頭の中で繰り返される「なぜ」 の二文字。


昨日まで、あんなに元気に泣いていたのに。


誰もがそう考えていた時、私はとある違和感を思い出した。

赤子の手首にあった模様、私は冷たくなった赤子の小さな手首をもう一度よく見てみた。


間違いなかった。


そこにはインクで書かれたかのようにくっきりと「890909」の数字と「 心臓 」という文字がその手首にはあった。


鳥肌が立った。

ありえない、そんな馬鹿な。

何かの間違いだ。

私はそう信じたかった。


この赤子の不可思議な死は、一つの残念な事故として終わるはずだった。


その頃からだ。赤子の死の後、流行り病のように生まれてくる赤子の手首には一列に並んだ六つの数字と、その下に一つの言葉が添えられていた。


だが、赤子一人一人の日付は違っていて、言葉も異なっていた。


そして私達はとあることに気づいたのだ。


まず初めに六つの数字は赤子の死期を表していて、最初の赤子の「890909」は


「XX89年09年09日」


つまり、生まれた次の日に死んでしまった日付を表しており、そして言葉はその赤子が死ぬ死因を表している。

なので「心臓」は赤子が死んだ原因とされる心臓発作だった。

生まれてくる赤子の日付は様々で、幸い最初の赤子のように短い日付が書かれている赤子は一人も見当たらなかった。

正直信じがたい出来事で、確証もないけれど今は他の赤子達が元気に長生きしてくれればそれでいい。


その赤子の死から数日...


色んな事が目まぐるしく変わってしまった。


事件から数週間経ったある日、XXXXと呼ばれる組織に私達がいた病院を追い出された。

彼等にはこの数週間で起きた不可思議な件を口外するなと言われた。


私達は病院に残されたまだ何も知らない赤子達を置いていくのがただ辛かった。

正直これからこの世界がどうなっていくのか想像もできない。


だけれど願わくば、 これを読んでいる貴方が長生きしてくれれば...

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