21話

亜人少女はユリエラさんが用意してくれたスープとパンはゆっくりとだが口に運び何とか完食した。それを確認した誠は


「あー....気を取り直して....僕はアムールっていうんだ。君の名前を教えてくれるかな?」


先ほどから俺に抱き着いて離れようとしないこの亜人少女.....

先ほど放そうとするとめっちゃ上目遣いで目をウルウルさせてくる。そんな目を向けられたらもう何もできないじゃん.....


「.....わからない」


「........」


帰ってきた言葉に思わず黙ってしまう


「じゃあ、マコトという名前は?」


今度はユリエラさんが質問する


「.........」


しかし、今度はだんまり

俺の服に顔を埋めて目すら合わせようとしない。


「あなたのお母さんは?」


違う質問をするが


「........」


一つ目の質問と同じようにだんまり


「アムールさん」


「はぁ....君のパパとママはどうしたの?」


今度は俺が聞くと.....


「わからないの....覚えてない」


「では、マコトっていうのは?」


「.....それも....わからない」


すぐに答えてくれる

そして撫でてと言わんばかりに頭を胸に擦り付けてくる....

あれ?.....この仕草.....


「いや、気のせいか.....?」


誠は一瞬頭をよぎった考えを現実離れしすぎていると思いなかったことにしてお望み通りにと亜人少女の頭をあげる

すると亜人少女は気持ちよさそうに目を細める...


「アムールさん」


ユリエラさんの少しきつめの声とかなり鋭めの視線を俺に向けてくる


「俺にそんな目を向けるな......」


「どうしてあなたの問いには答えて私のは答えてくれないんですか?それにどう見てもあなたにべったりですよね?」


そう言いユリエラは眉を少しヒクヒクさせながら俺に問い詰めてくる...


「そんなの俺だって聞きたい......」


「.....しかし、名前すらわからないのでは日常生活でかなり不便です。思い出すまでの間何か代わりの名前を与えるべきだと思います」


「そうだな.....なぁ、君はどうかな君が本当の名前を思い出すまで別の名前を付けようと思うんだ。それでいいかな?」


誠は亜人少女へ聞く

亜人少女は顔を上げ小さく一回頷いた


「よし!じゃあ、決めるか」


「では、決まったら私にも教えてください。私は自分の仕事に戻ります」


「え?ユリエラさんも一緒に考えないのか?」


「その子はあなたにべったりなのですからあなたが決めるべきです。それに」


そこで言葉を区切り俺から俺の膝にちょこんと座っているこの亜人少女に目を向け


「どうせ私の考えた名前では納得しませんよ。この子」


あれぇ~....

もしかして無視されてたこと根に持ってるんですか?


「わかった。じゃあ、俺が考える。スープとパンありがとう」


「いえ、それくらいのことはします。それではこれで失礼します」


そう言うと部屋から出て行った


「じゃあ考えるか.....」


この子の特徴と言えば尻尾が2本で猫又っぽいんだよな....

あとは目が翡翠色で....三毛猫が...ら。そして記憶が無い......



「あ、じゃあ三毛猫の『ミ』と記憶が0を言い換えた『レイ』を足してミレイにしよう!どうかな?」


「ミ...レイ....うん!私ミレイ!」


どうやら気に入ったようだ


「じゃあミレイもう少し寝よっかまだちゃんと回復したわけじゃないからね」


「うぅ~....まだ...一緒に...居たい」


拙い言葉で一緒に居たいと言い2本ある尻尾の両方を俺の右腕に絡みつけ少しの衝撃で折れてしまいそうなその細い両腕で俺の腰あたりを抱きしめる。そして目端をウルウルさせてくる.....


まいったなぁ~


多分だがこの子は心身の年齢に差があるんだろう

見た目は12、13歳くらいなのだがたまにでる仕草が幼稚園児のそれと同じだ....

獣人の身体と精神の成長速度は違うのか?.......国の書庫にあった文献にはそんなことは書いていなかった.....この子だけ特殊?いや、環境がそうさせただけなのか


「どう...したの?」


そんな考えに浸っていた誠にミレイは顔を上げ尋ねる


あぁ...今はそんなこといいか

今はこの子を寝かしつけよう。考察はそのあとでいいか


その時、ふと従妹を思い出した....

俺には鈴華すずかという小学1年生の従妹にがいる。身長的に言えばちょうどミレイと同じくらいだ...その子の両親は共働きで普段とても忙しいのでよく面倒を見ている...

鈴華が夜寝られないときには子守歌を歌い寝かしつけていた。今その時の鈴華とミレイが重なって見える....


「じゃあ一緒に居てあげるから寝よっか」


「ほんと?」


「本当だとも、いい子だからもう寝よう....体調が良くなったら君が望む限り一緒に居てあげるから」


「むぅ.....わかった」


「よし!いい子だ」



♦ ♢ ♦ ♢


「やっと寝てくれたか....」


スゥー...スゥーというゆっくりとした規則正しい寝息を聞き寝たことを確認した

ゆっくりとベットから離れ窓際にあるソファーに腰掛ける


一緒に寝てあげようと言った手前今から魔物討伐に行くのも気が引けるし、それに今日は光の道は出来てないから少なくとも効果範囲内に助けを求めている人はいないか.....平和で何よりだ




🍀🍀🍀🍀🍀🍀🍀🍀

ぜひコメントください!!(ToT)/~~~

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る