おまえ、サラリーマンだろ?
ナマケモノ
第1話 部長とランチ
部長とランチだ。ランチで美味しいものなんて滅多に食べられないので、遠慮なく鰻にした。
うまいっ!お昼に鰻、しかも経費で。部長が何か言ってるけど、無理!申し訳ないけど頭に入らない。食べることに集中し過ぎて、右から左だ。
昨日、退勤していた部長に「もう岡田課長とは一緒に働けません」とメールを入れて帰ったら、今朝、部長からお昼を一緒にと誘われた。
岡田課長は3ヵ月前に僕の課に転勤して来た。悪い人ではないのだが、とても気が小さく、良いことがあれば舞い上がり、悪いことがあれば狼狽える、細かなことばかり気にして、右往左往するだけの人なので、うんざりしていた。そして昨日だ。
定時過ぎてから会議を始めて、延々としつこく喚くので、いい加減に嫌になって、「スピッツみたいにキャンキャン喚かなくても」と諌めたら、岡田課長の方が切れた。だから、「もう良いです」と会議の途中で席をたち、退勤していた部長にメールを入れて帰ったのだ。
まあ、良い悪いはともかく、上司に楯突くのは褒められることではない。今の仕事を外されるか、最悪は転勤だろうな、と覚悟も決めていたので、何の迷いもない。鰻が美味い。
「高杉、聞いてるのか?」
部長に言われて我に返るが、残念ながら部長の言葉は記憶にない。まあ、頭に入らなかっただけで、聞いてはいたはずだ。
「はい、聞いていました」
「じゃあ、分かったな、頼むぞ」
やばい?何のことかさっぱり分からないが、何となく察しがつく。今更、引けない。
「絶対、嫌です」
部長は「そうか」と、お茶を一口飲むと、急に表情を変えて、有無を言わさぬ口調で僕に言った。
「おまえ、サラリーマンだろ、だったら、やれ!ともかく、やれ!言われた通りにやれ!」
***
やってらんない。と思いながらも、同僚の瞳さんと一緒に仲良く昨日の仕事の続きをしている。部長からは「昨日のことはなかったことにする」と言われた。岡田課長にも文句は言わせないし、もっと部下のことも考えるように指導するそうだ。但し、僕たちも岡田課長がやりたいことを出来るように課長に協力しろと言われた。
協力するのはやぶさかではない。でも、やりたいことってあんのかよ?と思いながら、まあ確かに、俺ってサラリーマンなんだな、って分かった気がした。まあ、いいや。何かあったら、今度はビールで焼肉をお願いしよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます