第2話




 ー闘技場ダンジョン7戦目ー



 鉄格子が上がり、敵が姿を現す。


 オーガだ。

 体長2.5m程、頭部に2本の角を生やし、発達した分厚い筋肉は並の攻撃は弾き返し、人なら両手持ちは必須だろうサイズの棍棒を右手で持つ。


 個体によっては魔法を使うようだがコイツが使えるかどうかは分からない。


「とりあえずは身体強化っと。」


 魔力の反応を感じたからか、オーガが右手に持った棍棒を振り上げ、突っ込んできた。


「グォォォォォ!」


 内臓に響くような低い声を出しながらオーガが棍棒を振り下ろす。


 それを左に飛び込んで交わすが、地面に叩きつけられた衝撃で地面が割れる。


 飛び込んだ体勢からオーガと素早く距離を取りつつ、体勢を整え、オーガと向き直り、短剣を2本物質化する。


「回避に集中しつつ少しずつ削っていこう。

 あのパワーと撃ち合うのはまだ無理。」


 自分に言い聞かせるように声に出して呟く。


「後手に回らないように、攻める気持ちを忘れずに。」


 ハイオーク戦で使用した、物質化を使った足場を腰あたりに垂直に作り、それを蹴るのと同時に魔力を瞬間的に足に多めに流して加速する。


「おらよっと!」


 一撃、二撃、三撃と、2本の短剣で浅いが連続でオーガに傷を与えていき、反撃が来るとバックステップなどで回避し、更に何度も何度も攻撃を加えていく。


 オーガは思うように当たらない攻撃と自分の身体に傷がどんどん増えていく事に苛立ちが増えていく。


 そして、身体が傷だらけになり、尚も当たらない攻撃に苛立ちが限界まで膨れ上がったのだろう。


「グォラァァァァァア!」


 怒りの咆哮をあげ、棍棒を闇雲に振り回しながら迫ってくる。


「あらら、これならハイオークの方が強かったな。」


 持っていた短剣をオーガに投擲し、闇雲に振り回していた攻撃を一時的に止める。


 そして、正気を失い暴れるオーガにトドメを刺すため準備をする。


 中途半端な攻撃じゃ仕留めきれないかもしれないので、反動があるけどあれで決める。


 腰を少し落とし、居合の体勢を取り、物質化で刀と鞘を生み出す。


 一旦、身体強化を解き、両手両脚と眼に魔力を集め、集中する。


 そして、両脚の魔力を解放し、先程以上の加速を生み出し、一瞬でオーガの視界から俺が消える…。


 俺は強化した眼ですれ違う一瞬を見極め、刀を鞘から一気に振り抜き、オーガの身体を切り裂き、塵となって、魔石を残して消えた。


 消えた後は、宝箱が出現する。


「ふぅー。」


 戦闘が終わり、物質化を解除する。


 疲労と反動でその場に座り込み、痛みに顔を顰める。


「っ痛いててて。」


 魔力解放をした影響で足がかなり痛い。


 ハイオーク戦で出た中級ポーションを飲むと痛みは消えて動けるようになる。


 ポーション様様である。


 ポーションの等級は下級、中級、上級、特級がある。


 下級は、切り傷や打撲なら一瞬で治る。


 中級は、欠損は無理だが、千切れた部位があればくっ付く。


 上級は、欠損した部位なしで治る。


 特級(エリクサー)は、死んでなければ治り、生まれつきの欠損でも生えてくる。


 そして、お待ちかねの宝箱だが、またまた魔鉱石10kgと中級ポーション3本、それから小さい箱。


「ランダムボックスきたーーーっ!」


 しかも、2個!


「とりあえず、帰ろ!」


 出るかは分からないが、期待はしている。







 闘技場ダンジョンを出た後、鉱石や魔石を売却しに探索者協会に寄る。


 探索者協会はダンジョン付近に建てられており、帰還した際に、すぐ報告や売却を行えるようになっている。


 銀行と提携しているのでそのままお金を預けることができるが今の時代、電子化が進み、現金を必要とする事がほぼほぼ無い。


 ちなみに探索者の稼ぎはピンキリで、D級もあれば普通に生活できるくらいだ。


 B級やA級になれば、ダンジョンにもよるが一回で数百万から数千万まで稼ぐ事ができるみたいだ。


 その分出費も多いし、人件費(パーティーの人数)もある。


 ランクによって、探索者は税金も優遇されている。


 国の為に、危険なダンジョンに潜り、生命いのちを賭けて資源を持ち帰るのだ。


 その分の報酬や優遇処置が無いと上位探索者は皆、国から出ていってしまう。


 俺のランクは一応C級だ。


 集団戦はスキルの関係であまり向いてないし、パーティーも組まないので、普通のダンジョンじゃなく特殊ダンジョン(闘技場型)しか潜ってない。


 勿論、普通のダンジョンも潜った事はあるがそれよりも1人なら闘技場の方が稼げる。


 何より、基本的に一対一だから。


 上の方の特殊ダンジョンなら複数もあるらしいが俺の行ってた方はB級なので複数は10戦目以降にキング種が出てくると取り巻きで出てくるぐらい。


 何故分かるかというと、すでに攻略済みダンジョンなので情報が出ている。



 探索者協会に到着したので買取の列に並ぶ。


 協会の中は、新規登録の窓口と依頼の窓口、買取や鑑定の窓口がある。


 買取や鑑定の窓口は3ヶ所あって、並んでいると空いた窓口に行くスタイルだ。


 今の時間は昼を少し過ぎたくらいなので10人ほどしか並んでいない。


 これが夕方とかなら3倍以上は待ちになる。


「次の方どうぞー!って瑛二君じゃない!今日は早いのね。」


 そう声を掛けてきたのは、内海 絵梨香さん。


 彼女は俺が探索者に登録する際に担当してくれた受付嬢だ。


「こんにちは、絵梨香さん。

 ランダムボックスが出たので今日はもう上がる事にしたんです。」


「そうなのね!良かったじゃない!」


 とりあえず先に買取する物からやっちゃいましょうか。っとそう言いながら、笑顔で一緒に喜んでくれた。


 彼女は俺のスキルを知っているし、属性宝珠を求めてるのも知ってるので良く励ましてもらったりしていた。


 なので、可能性があるランダムボックスが出たことを喜び、後は運との戦いね!と言ってくれた。


「魔石の方が、D級下位が1つとC級が2つと中級ポーション2本に鉱石が魔鉱石で20kgね。

 合計が17万5000円で内訳は聞く?」


「いえ、大丈夫です!」


 絵梨香さんは鑑定士で、鑑定士の鑑定結果を信じないなら自分で鑑定スキルを買うしかない。


 ちなみにかなり高額。


 絵梨香さんは普通の鑑定と違い、精密鑑定という鑑定より上のユニークスキルを持っている。


 このスキルは上級魔道具の詳細だったり、上級アイテムの詳細や呪いのレベルなど色々分かったりする。


 他の人は色々その分野の鑑定スキルを所持している。


 魔道具鑑定や武器鑑定、防具鑑定に人物鑑定など種類も豊富。


 普通の鑑定は簡易的な情報しか見れない。




「わかったわ。

 じゃあ端末に振り込んでおくから端末を貸してちょうだい。」


 端末を出して、絵梨香さんに渡す。


 端末とは、協会に登録するともらえる探索者の証だ。


 携帯と同じ機能があり、電話や電子決済も一緒にできて協会に預けてある資産も確認できる。


「はい、終わったわ。

 ランダムボックスの結果が出て良かったら教えてね!

 いい結果が出ることを祈ってるわ!」


 端末を受け取り、受付から離れる時、笑顔で小さく手を振りながらそう言われた。


 用事が済んだので、協会を出て、歩いて10分ほどの自宅に戻る。


 シャワーを浴びて、遅めの昼食を取り、いよいよランダムボックスを開封する。






 ーー補足ーー

 下級ポーション 1000 (濃い緑)

 中級ポーション 10000 (緑)

 上級ポーション 100万 (青)

 特級ポーション 時価 (水色)

 魔石

 F級500

 E級1000

 D級5000〜10000

 C級10000〜50000

 B級5万〜10万

 A級10万〜100万

 S級100万〜

 SS級不明

 魔鉱石は1kg5000円





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る