ウドンタアローン
お題:免れた笑顔 制限時間:15分
ああ、良いうどんだ。うどん。うどん。愚鈍。
もう六時間も前から国中の送電は停止し、都市では暴動が続いていると言う知らせがラジオから弱弱しく届いていた。
こんなにも静かなのは、いつぶりだろう?片田舎のこの町にはトラック一つ通っていない。交通機関も、、全て止まっていた。平たく言って、あと数時間でこの世界は滅亡する。どうやって滅亡するのかは知らされていないが、役所からの回覧板にそう書いてあったし、テレビもその話ばかりだった。テレビ首都だけは、アニメをずっとCM無しで放送していたが、それも送電が止まった今では昔の話だ。
私はマンションの自室で冷凍うどんをすすっている。カセットコンロがこんな時に役に立つとは。世界が終わるとき、隣に居るのは広大なコミュニティではなく、スタンドアローンの隣人だ。
半分溶けていたうどんも、煮てしまえば同じだった。
世界が終わろうとも、インスタントのうどんスープの鰹の香りは、変わらずここにあった。スタンドアローンなスープ。スタンドアローンなうどん。スタンドアローンな私。最期に実家にでも行けばよかったか。最期、最期は、特別なものではなく、いつもそばにあったもので迎えたかった。
スタンドアローンなうどん、スタンドアローンな私。一人ではあったが、独りではなかった。一人で私は、うどんの麺をすすり込んだ。
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