第4話 普通に生きたかった

 ねぇ、死ぬことが逃げることだとは思わないよ。


 傷つきすぎた貴女は、この世界から去るしかなかったんだもの。


 今すぐにでも日向を苦しめたヤツらを殺しに行きたい。


 そんなことしても、報われないことはわかってる。


 日向が生き返られないことも。


 貴女だってそんなこと望まないよね。


 殺人犯になんかなってほしくないよね。


 貴女のことを本当は全然わかっていなかった私だけど、これぐらいはわかるよ。


 でもさ、なんで私たちは普通に生きちゃいけないんだろうね。


 なんで日向は仲間はずれにされなくちゃいけなかったんだろうね。


 間違った道を歩んでいるから?


 同性同士じゃ子どもを産めないから?


 私たちは幸せに暮らしたいだけなのに。


 男性と女性が付き合うのが普通で幸せ?


 そんな、押しつけられた幸せなんていらない。


 こっちだって、みんなに「私たちを受け入れろ」って押しつけるつもりはない。


 ただただ普通に、生きたかっただけ。


 悔しくって苦しくって涙が止まらない。


 永遠に共に過ごしたかった人は、私を置いて逝ってしまった。


 私は貴女がいないと息ができないんだよ。


 あぁ……ダメだなあ。


 こういうところが日向の負担になっていたんだよね。


 本当にごめん。


 でも、私は今すぐ貴女の元へ逝きたい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る