独りになんてしない

佐久間清美

プロローグ 愛しい貴女へ

 優姫ゆうひ


 最初に謝ります。ごめんね、私たちの大切な家でこんなことをしてしまって。


 でも他にやれる場所なんてなかった。


 それにね、他の人に見つかるよりも、貴女に一番に見つけてほしかったから。


 わがままでごめん。


 傷つけてごめん。


 こんな姿を見たらトラウマになるとわかっているのに。


 見つけさせてしまってごめん。


 さっきから謝ってばかりだね。これじゃあ、なんで私が自殺を選んだのか、わからないよね。


 ごめん。


 あのね、優姫。私、会社で信頼ができる同僚に自分のこと話したんだ。


 同性しか好きになれないこと。彼女がいること。


 そしたらさ、次の日には部署中に広まってた。


 この人なら話しても秘密を守ってくれるだろうって思ったのに。「内緒にしてくれますよね?」って聞いたら、「勿論」って言ってくれたのに。


 嘘をつかれた。


 裏切られた。


 暴露されちゃった。


 それから私はチームワークを乱す危険因子とみなされたの。


 話しかけても無視。


 仕事は全然回してもらえない。


 今まで仲良くしていた同僚も、上司も、みんな離れていった。


 ずっと陰で……ううん、私に聞こえるようにね、私の悪口を言ってたの。


 我慢したよ。


 いつかは私の話題に飽きるだろうって。


 いつかは、また元通りに働けるだろうって。


 でも、限界。


 状況は変わらなかったし、辛くて、悲しくて、しんどかった。


 何度も優姫に弱音を吐こうと思った。


 結局、言えなかった。


 優姫が悪いんじゃないよ。


 私が弱かっただけ。話す勇気が出なかっただけ。


 ごめんね。


 貴女の前では強がることしかできなかった。


 心の距離を感じていたわけじゃないよ。


 むしろ逆。


 誰よりも寄り添ってくれる貴女だからこそ、私の重荷を背負わせたくなかったの。


 本当にごめん。


 もうこれ以上書いたら、旅立つ勇気が消えそうだから、そろそろ終わります。


 最後まで書いて、会社の屋上から飛び降りれば、アイツらは少しは反省するかもしれないと思いました。


 だけど、私はやっぱりここで死にたい。


 貴女との思い出が詰まった大切な、この家で。


 死んでこの世界から逃げる私を許してください


 どうか、私を最初に見つけてくれるのが貴女でありますように。


日向ひなたより


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