edulretni☚

しなはおのりたふの前るまじはがしなはおのぎつ −間幕−

  ◇  ◇  ◇



「小野寺……なにその格好」



 目の前にたつ大学のクラスメイト小野寺は、頭からつま先まで原色と水玉のトンチキな格好をしている。小野寺は大学からの付き合いで一緒にいることが多い。さわやかで顔がいいから初対面のときはなんとなく気後れしたけど、そつがないと思いきやテキトーなところもあって気が合う、と思う。スキがあってモテそうだ。が、目の前の小野寺は100%のダサさを放っている。



「じゃまするで~」


「……なんでそんなヘンな服着てんの……?」


「そこは『じゃますんなら帰って~』だろ」


「ボケ強要きつ……」


「ひどーい」


「なんなんだよ、ここ……」


「ここは中村クンの夢の中なのです」



 うっとうしい説明口調でしゃべる小野寺に「へー」とまぬけな声をだしてしまった。



「毎度おなじみ『さかさまの国』です」


「『さかさまの国』ぃ?」


「ここでは全ての事象が逆、反対、鏡になるのです」


「あー鏡の国ね。千歳が言ってたやつね」



 夢まであいつと同じになるのかよ……。

 じゃ、今度は俺が『死ね』って言われる番かぁ……。



「チ、トセ」



 ぼそりと呟いた小野寺に目がいく。



「あ?」


「チトセ?」


「佐々木だよ。佐々木千歳。コース同じの」


「そんなのはイナイ」


「……」


「チトセ、イナイ」



 どろり、小野寺のカオが溶けた。


 根が生えたように動けない俺の足に、溶けた小野寺の妙にカラフルな液がのびてくる。原色の景色が歪む。そういえば、俺、空の上に逆さまに立って……


 ――……スローモーション。





「チトセイナイイナイイナイイナイイナイイナイイナイイナイイナイイナイイナイイナイイナイイナイイナイイナイイナイイナイイナイイナイイナイイナイイナイイナイイナイイナイイナイイナイイナイイナイイナイイナイイナイイナイ」





 ねっとりと迫ってくる元小野寺に反射的に足が動いた。



「ぅわぁああぁああ!!」



 走る。走る。

 こんな走るのは高校の時以来だ。

 息が苦しい。肺が焼けそうだ……!


 ぐら、と体が傾いた。

 赤くてネバついた空から足を踏み外して――


 落ちる――――……


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