華やぐ恋、蓮の恋路と百合の調べ 〜私の選んだ唯一の華。それぞれの愛情が紡ぐ、特別な日々〜

@7060maison

第1話

 普通の日常。そう、それが私、蓮の生活だった。だけど、最近、何かが違う。それは、幼馴染みの澪の態度だ。


「蓮、昼休み一緒にどう?」


 澪が照れくさそうに私に声をかける。彼女は普段、元気で活発。でも、最近は私に対してどこか照れた様子が見える。


「うん、いいよ」


 私は返事をする。彼女の笑顔が私の心をふわっと暖かくする。

 なんだか、心の中で小鳥がさえずっているような、そんな気持ちだ。


 昼休み、屋上で二人きり。いつもは賑やかな澪が、今日はどこかおとなしい。彼女が恥ずかしそうに視線をそらす。それが、何故か私の心を高鳴らせる。


「ねえ、蓮」


 澪が小さな声で私に話しかける。その声は、いつもの元気な澪からは想像できないほどに、優しくて、甘い。


「なに?」


 私は聞き返す。澪は瞳を閉じて深呼吸をする。そして、顔を真っ赤にして目を開け、私を見つめる。


「私、蓮のことが好き」


 彼女の告白に私は驚く。だけど、その言葉は私の心に柔らかく響く。それは、まるで長い間待ち望んでいた言葉のようだ。


「私も、澪のことが好きだよ」


 私は笑顔で告白する。

 その瞬間、二人の間に新たな絆が生まれる。それは、友情以上、恋人未満の何か。それが私たちの新しい日常になる。


 *****


 澪との時間は、いつもエネルギーに満ち溢れていた。彼女はどこに行くにも活力を持って行動し、そのエネルギーは周囲にも伝染した。私たちは長い間一緒に過ごしてきたので、彼女の感情を隠すことなく共有することができた。


「蓮、今度の日曜日デートしない?」


 澪は上目遣いで私を見る。その表情はとても可愛くて、抱きしめたくなる。


「うん、行こう!」


 私が笑顔で答えると、彼女は嬉しそうな顔を見せる。

 彼女の瞳は、いつも情熱的で強い光を放っていた。


 澪と一緒にいると、とても楽しくて時間があっという間に過ぎていく。彼女と過ごす時間はとても充実していて、この世界にはこんな素敵なものがあるんだってことを実感させてくれた。


「蓮……好き」


 澪は恥ずかしそうに呟く。その姿は愛らしくて、思わず抱き締めたくなった。

 私たちはお互いのことをよく理解していた。好きな食べ物や嫌いなもの。どんな時に嬉しいと感じるか。そして、何よりも大切なことは、お互いに相手のことを大切に思っていたことだ。


 澪と一緒なら何でもできる気がする。

 だから私は、澪のことをずっと大切にしていこうと、心からそう思った。


 *****


 ある日、昼休みの校舎の中はひそひそとした囁きで充ち満ちていた。それは私、蓮と澪の関係についての噂だった。私たちは幼馴染みで、最近は更に親密な関係になった。その事実は二人だけの秘密であるはずだったのに、どうやら学校中に広まってしまったようだ。


「蓮と澪が付き合ってるって本当?」

「蓮のこと、澪が好きだって聞いたよ!」


 などと、クラスメートたちはキャーキャーと騒いでいた。

 でも、その噂が広がったことで、事態は思いがけない方向に進んでいく。それは詩織、瑞希、花音という三人の女性が関与してくるからだ。


 詩織は私のクラスメートで、いつもクールで落ち着いている。彼女は頭が良くて、真面目な性格。でも、その真面目さが私にとってはとても魅力的だった。詩織は私のことを深く理解しようとする姿勢を見せていて、それが嬉しかった。


 瑞希は私の隣に住んでいるアーティストで、情熱的で自由奔放な性格。彼女の作る芸術作品はいつも私を感動させてくれた。瑞希は私のことを「ミューズ」と呼び、その言葉が私の心をくすぐった。


 花音は私の後輩で、いつも可愛らしくておっとりしている。彼女の優しさと純粋さが、私の心を癒してくれた。そして何故かは理解できないけれど、どうやら花音は私のことを尊敬してくれているようだ。


 私と澪の関係が変わったことで、詩織、瑞希、花音も、彼女たちは私に対して、様々な形で自分の気持ちを表現し始めた。そのことが、私の生活を一変させることになる。


 私の日常は次第に彼女たちのアプローチで埋め尽くされていく。それは新鮮で、楽しい時間だった。でも、それが私と澪の関係にどのような影響を与えるか、その時の私にはまだわからなかった。


 *****


 詩織との時間は、いつも知的な刺激に満ちていた。彼女はまるで生まれつきの学者のように、学びへの情熱を胸に秘めていた。それは学校の教科書に書かれていることだけでなく、文学、哲学、科学、歴史と、彼女の知識は多岐にわたっていた。


「蓮、この本を読んだことがある?」


 彼女は私に一冊の本を差し出した。それは古い哲学書だった。


「最近読んだのだけれど、とても興味深い書物だった。これを読めば、貴女も世界の見え方が少し変わるかもしれないわ」


 詩織と図書館で過ごす時間は、私にとって新たな視点を提供する貴重な時間だった。彼女の視野の広さにはいつも驚かされ、彼女の話を聞くことで私自身も成長していくことを感じた。


 ある日、彼女は私に一つの問いを投げかけた。


「蓮、あなたは自由とは何だと思う?」


 その問いは私の心に深く響き、それからの私たちの会話は哲学的な深みに引き込まれていった。

 彼女は真剣な眼差しで私を見つめる。彼女の瞳はどこまでも真っ直ぐで、その輝きに私は圧倒される。


「私にとって、自由な時間は、誰かに束縛されない時間のこと……かな?」


 私が答えると、彼女は微笑む。


「なるほどね……確かにそういう考え方もあると思う。でも、私が思うに、自由な時間とはもっと深い意味を持っているような気がする」


 詩織はゆっくりと言葉を紡ぐ。その声はとても優しく、穏やかだ。


「私はこう考えるの。自由というのは、自分を信じるということ。自分が正しいと思ったことに正直になる。それが自分を信じることに繋がる」


 彼女はそう言うと、静かに本を閉じた。その言葉は私の心に優しく響いた。

 すると、彼女は私の手を取り、じっと見つめた。彼女の瞳はとても美しく、まるで宝石のようだった。


「蓮、貴方は自分の意思で道を切り開いてきた。その結果として今の貴方がいる。そのことを忘れないで欲しい。だから、自信を持って……」


 彼女の言葉は、私の心に染み込んでいく。その声はまるで、天から降り注ぐ恵みの雨のようだ。


 詩織の言葉はいつも優しく、私を導く。それは彼女の生き方そのもので、その言葉に触れることで、彼女の信念を知ることができた。


「ねえ、蓮。何か困っていることはない?」


 詩織は心配そうに私を見る。その表情はとても繊細で、美しい。


「大丈夫だよ。詩織のおかげで、毎日がとても充実しているから」


 私が笑顔で答えると、彼女は安堵したように笑みを浮かべる。


「良かった……。私、いつも蓮に頼ってばかりだから、いつか蓮の負担になってしまうんじゃないかって、それが不安だった」

「そんなこと無いよ! 詩織はいつも私を助けてくれるし、私にとっても大切な人だから」


 私が笑顔で答えると、詩織は照れた表情を見せる。


「ありがとう。そう言ってくれると、凄く嬉しい」


 私たちは笑い合い、そして見つめ合う。彼女の美しさに、私は思わず息を飲む。


「あ、あの……もし、蓮が良ければなんだけど……今度一緒にどこかに出掛けない? その……二人で」


 彼女は顔を真っ赤にして俯く。その姿は愛らしくて、抱きしめたくなる。

 私は彼女を抱き締め、耳元で囁く。


「うん、行こう」


 詩織は嬉しそうな顔で私を見た。その輝く瞳を見て、私は確信する。私が詩織を必要としているように、詩織も私を必要としてくれているのだと。

 そうして私たちは、お互いの心の距離を埋めていく。そのことで、今まで以上に親密な関係になっていった。


 *****


 瑞希との時間は、いつも情熱的で、自由な創造力が溢れていた。彼女のアトリエは、色とりどりの絵の具とキャンバスでいっぱいで、壁には彼女が描いた絵が並んでいた。


「蓮、これを見て何を感じる?」


 彼女は私に自身の最新作を見せた。それは彼女の心を表現した抽象的な絵だった。

 瑞希と一緒にいると、普段は気づかないような色や形、感情に気付くことができた。彼女の情熱的な創造力は、私にとって新たな視点を提供してくれる。


 ある日、彼女は私に絵筆を手渡してきた。


「蓮、君の心を描いてみてよ。……ああ、変に緊張しなくていい。ボクはただ、君自身を知りたいだけなんだ。芸術は自分の心を表現するために最も優れた手段だからね」


 彼女の言葉に触発され、私は初めて自分の心を絵に描くことに挑戦した。描き終えた絵を見て、瑞希はにっこりと笑った。


「これが蓮の心か。素敵だよ」


 瑞希との時間は、私にとって自己表現の大切さを教えてくれた。私と澪の関係は、相変わらずぎこちなかったが、それでも、少しずつ彼女との距離は縮まっていた。

 そんなある日。ついに瑞希は私に関心を示し始めた。しかし、それは純粋な好意ではなく、依存に近いものだった。


 彼女はおもむろに私に近づくと、私をじっと見つめた。そして、私を引き寄せると、私をそっと彼女の胸元に抱き寄せる。

 瑞希は私を優しく抱擁すると、私の頭を撫でながら呟いた。


「君は本当に可愛いねぇ。ボクだけの人形になってくれたら良いのに……」


 彼女は私の髪を指先で弄び、うっとりとした表情で私の髪の匂いを嗅いだ。彼女の吐息が私の首筋にかかり、私は身体が熱くなるのを感じた。


「ボクはずっと一人だったんだ。でも、今は違う。君という存在を知ってしまったから。もう、君がいない生活なんて考えられない」


 彼女は私の頬に手を当て、じっと私の目を見つめる。その瞳には狂気にも似た愛情が見え隠れしていた。


「君は誰にも渡さない。……絶対に」


 そう言うと、瑞希の顔が私に近づいてくる。彼女の唇が私の口元にくっつきそうになったところで、慌てて私は彼女を押しのける。


「ちょっと待って! 落ち着いて」


 私が叫ぶと、瑞希は不思議そうな表情で私を見る。


「どうしたの? そんなに怯えなくてもいいじゃないか。……もしかして、嫌だった?」


 瑞希は悲しそうに目を伏せる。


「ごめんなさい。私、お付き合いしている人がいて、その人としかそういうことはしないって決めてるんです」


 私はそう告げるが、瑞希は納得いかない様子だった。


「ふーん。……まあいいや。じゃあ、ボクも付き合おうかな?」

「え?」


 呆気に取られていると、瑞希は悪戯っぽく笑う。


「……冗談だよ。ははっ、もしかして本気にしたのかい?」

 私はホッとすると同時に、怒りが込み上げてきた。


「ふざけないでください!」


 私が声を上げると、彼女はクスッと笑った。


「怒った顔も可愛いよ。……ボクはいつだって君の味方だから」


 そう言い残して、彼女は私の前から去っていった。

 何というか、彼女は自由奔放で掴み所のない人だった。だが、その行動原理は理解できないものの、彼女の芸術に対する真摯な姿勢だけは伝わってくる。


 結局、先程の言動は本心だったのか。それとも本当に冗談だったのかは分からなかった。

 ただ一つ言えるのは、瑞希と過ごす刺激的な時間は、私にとって決して不愉快ではないということ。彼女のペースに巻き込まれながらも、私なりに充実した日々を送っていた。


 *****


 花音と過ごす時間は、いつも穏やかで癒しの時間だった。彼女はいつも私に微笑んで、時折、自分の感情を照れくさそうに表現する。その表情は、無邪気で純粋で、心から温かさを感じさせてくれた。


「蓮先輩、私、いつも先輩のことを見ていました。先輩の優しさや、強さにずっと憧れていました」


 彼女はそう言って、照れくさそうに顔を赤らめた。


 花音と一緒にいると、私自身まで心が洗われるような、救われるような気分にさせてくれる。彼女の純粋さと心の温かさは、私にとって大切なものになっていた。


「ありがとう。私も、花音のことが大好きだよ」


 私が笑顔で答えると、彼女は顔を真っ赤にして俯いた。そして、少し間を置いて、ゆっくりと顔を上げた。


「蓮先輩、私、蓮先輩のことが好きです。私とお付き合いしてくれませんか?」


 彼女の言葉に私は戸惑った。彼女の気持ちは嬉しい。だが、彼女の想いに応えることはできない。なぜなら、私には澪がいるからだ。それに、花音が私に対して抱いている感情は恋愛ではなく、単なる憧れのような気がした。


「……ごめんね。私、他に好きな人がいるの」


 私が申し訳なさそうに言うと、彼女は寂しげな表情を浮かべた。


「……やっぱり、ダメですか?」

「うん、ごめん。花音の気持ちはとても嬉しかったけど、私は花音の恋人になることはできないよ。……本当にごめんなさい」


 彼女は首を横に振る。


「謝らないで下さい。私こそ急に変なこと言っちゃってすみませんでした」


 彼女は涙を堪えながら、無理に明るく振る舞う。その姿は痛々しく、胸が締め付けられる。


「あの……最後にお願いがあるんです。一度だけハグしても構いませんか?」


 私は迷ったが、彼女の頼みを断ることができなかった。


「分かった」


 私が両手を広げると、彼女は私に抱きついてきた。私は彼女の背中に手を回し、優しく抱きしめた。


「蓮先輩……。私、ずっと好きでいます。だから、いつか私のことを好きになってくれるまで」


 彼女はそう呟き、私から離れた。その時、彼女は泣いていた。だが、それを悟られないように、必死で表情を取り繕っていた。


 彼女は目にいっぱいの涙を溜めたまま、私に向かって手を振ると、そのまま振り返ることなく走り去って行った。

 私は彼女を引き止めることもできず、ただ彼女の後ろ姿を見つめていた。


「花音……」


 私の呟きは虚しく宙に消えていく。

 何故だろう。彼女を見ていると、とても胸が苦しくなる。こんな思いは初めてだ。


 居た堪れなくなった私は、考える間も無く花音の元へと走っていった。そして、彼女の腕を掴むと、強引にこちらを振り向かせる。


「花音、待って!」


 彼女は驚いた表情で、私のことを見た。その目からは大粒の涙が零れ落ちている。


「蓮先輩……?」

「その、……泣かないで」


 何と言ったら良いのか分からず、咄嗟にそんなことを口にした。

 私の言葉に、彼女はハッとした表情になり、すぐに目を擦り始める。


「……あ、これは違うんです。大丈夫ですから」

「でも……」

「私なら平気ですよ」


 彼女は私に心配をかけまいと、懸命に笑顔を作ろうとしている。それが余計に辛かった。

 どうすればいい? 私はどうしたら、この子を救える?

 そんなことを考えているうちに、気がつくと私は彼女にキスをしていた。


「れ、れんせ、せんぱい!?」


 彼女は驚きのあまり、固まってしまった。私は自分がしてしまったことに戸惑いながらも、どうにかして慰めたい一心で言葉を紡ぐ。


「その、……元気出して」

「……はい」


 花音は恥ずかしそうに返事をする。


「えっと……、このことは誰にも言わないで欲しいかな」

「はい、もちろん言いませんよ。……その、ありがとうございます。おかげでちょっとだけスッキリしました」

「それなら良かったよ」

「はい! ……えへへっ」


 花音は嬉しそうに微笑む。だが、私は自分の行動に後悔していた。……どうして、あんな事をしてしまったんだろう。自分でも理解できない。

 花音は私に背を向けると、大きく伸びをした。


「さてと、そろそろ帰りますね」

「う、うん。じゃあまたね」

「はい、失礼します」


 花音は深々と頭を下げると、そのまま帰ってしまう。

 ……思いつきでとんでもないことをしてしまった。私は罪悪感に苛まれながら、その場で暫しの間、立ち尽くしていた。


 ただあの行動が功を奏したかは分からないけど、花音とはすれ違いを起こすことなく、翌日も問題なく顔を合わせることが出来た。……何故か、以前より距離が近過ぎるような気もするが。

 まあ何はともあれ、花音と気まずくならずに済んで良かった。



 *****


 詩織、瑞希、花音と過ごす時間が増えるにつれて、私は彼女たちの魅力をより深く知ることになった。詩織の知性、瑞希の情熱、花音の純粋さ。それぞれが私の心を動かし、私の日常に新たな色彩を加えてくれた。


 詩織との勉強は、私に新たな視点を与えてくれた。彼女の深い考え、広い視野は私を刺激し、学びの楽しさを教えてくれた。


 瑞希とのアトリエでの時間は、私に自由な表現の大切さを教えてくれた。彼女の熱意は私に感動を与え、自分の感情を素直に表現する勇気をくれた。


 花音との会話は、私に純粋な気持ちの大切さを教えてくれた。彼女の優しさは私の心を癒し、感謝の気持ちを育ててくれた。


 しかし、その一方で、澪と過ごす時間は減ってしまった。私たちは以前のように二人きりで過ごす時間が少なくなり、私たちの間には微妙な隙間が生まれてしまった。その変化に、私は何とかしなければと焦りを感じ始めた。


 そんな中、澪の態度が変わった。彼女は以前のように明るく振舞わず、私に対して少し距離を置くようになった。それは彼女が私のことを避けているように見え、私はその理由を理解できなかった。


「澪、何かあった?」


 私は澪に問いかける。しかし、彼女は答えず、ただ頷いて微笑むだけだった。その微笑みは悲しげで、私はそれが何を意味するのかを必死に考えた。

 詩織、瑞希、花音と過ごす時間は楽しいけれど、その一方で澪との距離が開いていくのを感じていた。


 ある日、澪と二人きりになる機会があった。普段の彼女の明るさはなく、代わりに彼女の目には悲しみが浮かんでいた。私は彼女のその表情を見て、胸が痛んだ。

 彼女は一瞬だけ私を見て、そして声を震わせながら言った。


「蓮、私たちはもう、以前のようには戻れないの?」


 その言葉に、私は驚いた。それは私が澪に対して抱いていた不安が現実になった瞬間だった。


「私たちは、詩織や瑞希や花音と一緒にいるあなたを見てきた。それが私たちの関係に影響を与えていると思う。でも、私はあなたを失いたくない」


 彼女の告白に、私は何も言うことができなかった。ただ、澪の涙を見て、自分の無力さを痛感した。


 その日から、私たちは更に距離を置くようになった。私たちの関係は、以前のような明るさを失ってしまった。


 *****


 私は自分の気持ちを整理するために、一人で学校の屋上に行った。空を見上げながら、私は自分が何をすべきかを考えた。


 私は澪のことが好きだ。それは間違いない。でも、詩織、瑞希、花音と過ごす時間も楽しかった。それぞれが私にとって大切な存在だ。

 私は自分の心の中を見つめ直し、深く考えた。そして、自分の答えを見つけた。


 次の日、私は詩織、瑞希、花音を呼び出した。


「私はみんなと過ごす時間が好き。でも、私の心の中には澪がいる。私は澪が大好き。だから、これからもみんなと友達でいたい。でも、恋愛感情は澪に向けたい」


 私の言葉を聞いて、三人は黙って聞いてくれていた。


「こんなことを言ってごめんなさい。……でも、これが私の本音です」


 私の言葉を聞いた後、最初に口を開いたのは花音だった。


「……やっぱりそうでしたか」


 彼女は寂しそうな表情で呟く。


「蓮先輩は、きっと澪先輩を選ぶだろうなって思ってました」


 花音がそう告げると、今度は詩織が私に訊ねた。


「ねえ、蓮ちゃん。一つだけ教えて」

「……なに?」

「もし、澪ちゃんを選んだら、……私たちとの関係はどうなるの? 今まで通りの関係ではいられないよね」


 詩織は真っ直ぐに私の目を見る。その瞳には強い意志が込められているように見えた。


「……私は正直、迷っている」

「どうして?」

「詩織たちの存在は、私の中でとても大きなものになっている。だから、……みんなのことも大好きなの。もちろん、……澪のことはもっと好き」

「そう……」

「うん。……でも、私は自分の心に嘘はつけない」


 私の言葉を聞き、詩織と花音はお互いの顔を見た。そして、二人は笑顔を浮かべる。


「蓮の気持ちはよく分かったわ」

「私も分かりました」


 二人の返事を聞くと、私はホッとした。これで全てが終わった訳ではないけど、それでも彼女たちと別れなくて済むことに安心していた。


「ありがとう」


 私は二人に感謝を伝える。

「でも、私も簡単に諦めたりしないからね」


「私もですよ」

「えっ!?」


 予想外の展開に驚く。すると、花音は真剣な眼差しで私を見据えながら言った。


「だって、……私は蓮先輩のことが好きですから!」


 花音は拳を握りしめ、力強く宣言する。

 すると詩織も、私に視線を向けながら話す。


「私も同じ気持ちよ。蓮ちゃんは私の憧れ。簡単には譲らないわ」


 詩織は私の手を握る。その温もりに驚きながらも、私は嬉しさを感じた。

 花音と詩織は私のことを大切に思ってくれている。そんな彼女たちの想いに、私は感謝した。


「おっと、ボクを忘れてもらっては困るな」


 そう言っていつの間にか背後に回っていた瑞希が私の肩に手を乗せる。突然の出来事に振り向くと、瑞希は優しい笑みを私に向ける。


「ボクは蓮のことが大好きだよ。まあ蓮の一番になりたいのが正直なところだけど、ボクは二番でも構わない。だから、これからも仲良くしてくれないか?」


 瑞希はいつものように明るく笑いかける。その様子はどこか大人びていて、私の心を落ち着かせてくれた。


「うん、よろしくお願いします」


 私は笑顔で答える。こうして、私と彼女たちの友情は続いていくことになった。


 *****


 私は慎重に足を運んだ。目指すは、いつも澪が過ごしている屋上だ。その扉を開けるたびに、私の胸は複雑な感情でいっぱいになる。今日もまた、その感情が私を包んでいく。


「澪、話があるんだ」


 私は、彼女の前に立ち、力を込めて言った。彼女がゆっくりと振り返り、その静寂の中で私は自分の心拍を感じた。


「澪、私は貴女のことが好き」


 私の声は固く、しかし心からのものだった。


「他のみんなと過ごす時間も大切だけど、貴女と過ごす時間が一番大切だよ。」


 彼女の目は少し驚いた様子を見せたが、私は続けた。


「だから、これからも一緒にいてくれるか?」


 澪はしばらく黙って私を見つめた。その瞳は深く、何を考えているのか読み取ることができなかった。しかし、その後彼女が微笑み、ゆっくりと頷いたとき、私の心は一気に軽くなった。


「もちろんだよ、蓮」


 彼女の声は優しく、温かさを感じさせた。


「私も、蓮のことが好きだから」


 彼女の言葉が私の耳に届き、胸が満たされていく感覚があった。それは安堵、喜び、そして愛情。私たちはお互いを見つめ合い、それだけで理解し合える関係になった。


 そして、そこには新たな始まりがあった。


 *****


 その後の私たちは、これまでよりも一層仲良くなり、日々を楽しく過ごすことができた。詩織、瑞希、花音とはそれぞれの特別な時間を増やし、一緒に学び、遊び、そして成長することができた。


 詩織とは週末に公園の読書会を開くことにした。お気に入りの本を持ち寄り、互いの選んだ名作について語り合う時間は、私たちの知識を深め、絆を強くした。


 瑞希とはアートのワークショップを開くことになった。彼女のアトリエで、一緒に絵を描いたり、彫刻を作ったりする時間は、私たちの創造力を高め、想像力を刺激した。


 花音とは音楽プロジェクトを立ち上げることにした。以前から興味があったらしく、二人で好きな楽器を使って、自分たちだけの音楽を創り上げる時間は、私たちの音楽的才能を伸ばし、共感を生んだ。


 そして、澪とは新たな冒険を始めることになった。私たちは週末のデートを企画し、一緒に映画を見に行ったり、カフェでおしゃべりをしたり、時には小旅行を楽しんだりした。澪と過ごす時間は、私にとって最高の幸せで、心から愛している彼女との時間は、私の心を満たし、日々を彩った。


 私たちの学園生活は、そんな日々が繰り返される中で、新たな日常となっていった。詩織、瑞希、花音、そして澪。彼女たちは私の日常に色とりどりの色を添えてくれ、私の心を豊かにしてくれた。


 私は改めて思った。私は彼女たちと過ごす日々が好きだ。そして、何よりも澪と過ごす時間が好きだ。私は彼女たちと共に、これからも楽しく、充実した学園生活を送りたい。


 これからの私たちの日々は、きっと明るく、楽しく、時には苦しく、でもそのすべてが私たちの宝物となるであろう。そんな未来を私たちは一緒に描き続けるのだろうと、私は確信していた。


 新たな日常の中で、私たちはそれぞれの時間を大切に過ごす。詩織との深い議論、瑞希との自由な創作、花音との情熱的な練習。それぞれの時間は私にとって貴重なもので、それぞれが私の心を豊かにしてくれた。


 そして、何よりも澪と過ごす時間。彼女と一緒にいると、心が安らぎ、何もかもが明るく感じられた。彼女の笑顔、彼女の声、彼女の存在。すべてが私の心を満たし、私の日々を彩ってくれた。


 彼女たちとの日常は、私にとって大切な宝物だ。彼女たちと過ごす時間は、私にとって最高の幸せだ。それぞれが私にとって特別な存在であり、それぞれが私の心の中で大切な場所を占めている。


 だから、これからも、私たちは一緒にいる。一緒に学び、一緒に笑い、一緒に泣き、一緒に成長する。それが私たちの新たな日常であり、それが私たちの未来だ。


 私たちはそれぞれの道を歩みながらも、一緒にいることを大切にしていく。それが私たちの絆であり、それが私たちの愛だ。そして、それが私たちの物語だ。


 私たちの物語は、これからも続いていく。

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