元魔王様とテルイゾラの地下空間 10
酒場で時間を潰しているとテスラ達が戻ってきた。
特に問題も無かったらしく早速地下へと向かう事になった。
「ここからテルイゾラの地下世界に入れます。」
「随分と厳重だな。」
「テルイゾラの生命線の様な場所ですから。」
鋼鉄の扉に守られた地下への入り口。
見張り役の者も二人いて扉の両脇に待機している。
扉に近付いていくと二人が敬礼して迎えてくれる。
「お疲れ様です、ミーナ殿そちらは?」
権限を持っているミーナは当然だが顔を覚えられているので通行に全く問題無い。
しかし初めて見るジル達には少し警戒する様な視線をむけてきている。
「お得意様のご紹介でお連れしました。取り引き額も確認済みです。」
「成る程、ですが一応規則ですから入行許可証を拝見しても?」
「構わないわよ。でもその前に少し尋ねたい事があるんだけど。」
テスラが二人と何気無い雑談を始める。
テルイゾラが初めてなのでお勧めの場所を尋ねたりしながら会話を続ける。
当然これには目的があって、円滑に話しを進める為に事前にチャーミングボイスの魅了魔法を使用していた。
「色々とありがとう。それじゃあこのカードをお願いね。」
魅了魔法に掛かった事を確認したテスラが話しを切り上げてゴールドカードを渡す。
先程のミーナと同じく魔法道具で過去の取り引き記録を調べる。
「こ、これ程の額とは!?」
「凄いわよね。私も知人がこんなに取り引きしてるとは思わなかったわ。」
敵である邪神教の女性を知人と言う事にして話しを進める。
「これ程の額ですからね。それと盗難されて悪用される事もありますから貸し借りは控えて下さいね。」
「ご忠告ありがとう。」
ゴールドカードを渡されながら忠告されるが正に今がそれだ。
魅了魔法のおかげで疑われずに済んだ。
ジル達はついに扉の奥へと通されて、下に向かって長く続く階段を降りた。
「ここがテルイゾラの地下世界となります。」
階段を降りた先に広がっていたのはもう一つのテルイゾラの街と言った感じの世界だ。
地上と同じく多くの建物が立っていて街並みが出来上がっている。
地上と違って人が少ない事以外は何も変わらなそうだ。
「相当な広さだな。」
「上と大差ないですよ!?」
「ここであれば大量の物資を保管しておけそうですね。」
地下の広さにジル達も驚かされる。
街の下にこれだけの街があれば驚くのも無理はない。
「倉庫だけでは無く地上と同じく生活圏もあります。なので滞在中もそこまで不自由無く暮らせると思いますよ。」
「分かった。ミーナ、案内ご苦労だった。」
「いえいえ、それでは私はこれにて失礼しますね。出る時は細かな確認がいらないので入行許可証を使って出て下さい。」
ミーナが一礼して立ち去っていった。
入るのが大変な地下世界だが、一度入ってしまえば出るのは簡単らしい。
と言っても自分達で入行許可証を使って入った者だけだ。
人質達は勝手に出る事は出来無いだろう。
「さて、先ずは侵入成功だな。」
「ジル様、早速調べてもらえますか?人質の子が心配で心配で!」
地下世界に入れたからか、一早く人質の少女の場所を知りたくなった様だ。
「今更ですね。」
「とてもそんな反応をする様な行動はしていなかったと思うけど。」
「そ、そんな事は無いですよ?」
娼館の事を言われている自覚はあるのだろう。
二人から視線を逸らしている。
「少し待っていろ、空間把握!」
元々人質を探す為にやってきたので使わない訳も無い。
ジルは魔法を使用して地下に広がる広範囲を認識していく。
「どうですか?」
「特にこの近辺で怪しい場所は無いな。それにしても広い。」
空間把握は認識範囲を広げる程に大量の魔力を消費してしまう。
なのである程度範囲を広げたところで止めたが、調べるのには何度か使わなければいけないだろう。
「では移動して魔法を使っていきましょう。ここで認識範囲を広げ過ぎるのは魔力消費が多過ぎます。」
「そうだな、少し歩くか。」
せっかく地下世界にやってきたのだから観光も楽しむ。
全体的な人の数が少ないからか、やたらと治安維持の者達が多く見える。
「ミーナが言っていた通り上と変わらないな。」
「少し見回りの者が多いくらいですかね?」
「声を掛けられないかドキドキします。」
同じ立場の者としてフォルトゥナが緊張している。
「あの警備を突破してきたのですから無闇矢鱈に声を掛ける様な真似はしないのでは?」
「そうは言っても我らの様な普段見掛けない者が集団でいたら気になる者もいるかもしれない。なるべく騒ぎは起こさずに穏便にいこう。」
「お任せ下さい。私の魔法が光る時ですね。」
「頼りにしている。」
何か問題が起こりそうになってもこちらにはテスラの魅了魔法がある。
大半の事なら事前に何とか出来るだろう。
「ん?ここか?」
「見つけましたか!?」
移動しながら空間把握の魔法を使用していると気になる場所を見つけた。
思わずフォルトゥナの声も大きくなる。
「フォルトゥナ、声が大きいわよ。」
「まあ、人質が心配だろうからな。だが我は人質達を見た事が無いから確証は無いぞ。人が多く集まっている場所を見つけただけだ。」
「案内をお願いします。僕なら見れば直ぐに分かるかと。」
「分かった、怪しまれない様に慎重に向かうぞ。」
ジルが空間把握で見つけた場所に五人は向かっていった。
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