初日08:35:33/日向漁港/桐原真由

「どうしよう・・」


正美さんは不安が籠ったな声で言う。

漁港の、打ち上げられていた適当な漁船の陰に身を隠し、小さく震えている。

この町の最奥地であるこの漁港に来た頃から不味いことになっているのはわかっていた。


まず、この地区だけなぜか怪物の数が多い。

そして時たま聞こえる銃声。

どうにも、どこからか私達を助けてくれているみたいで、何度か怪物に追いかけられてもいつの間にか銃声が鳴り響き、追いかけていた怪物が悲鳴を上げて倒れているのだ。


「誰かが私たちに気づいてくれたのかな?」


私は小さく震えている正美さんの横で腕を組んで考え込む。


「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ、早くさっきの子見つけないと」

「ええ、だけどその前にここから出ないと」


私は正美よりはだいぶ落ちついている。

さっき銃を構えた変な老人に会ってから、なぜか恐怖心が消えてきたのだ。


「さっきの食堂で借りてきた地図だとここは漁港よね・・・で、食堂がここだから・・・」

「どこか安全そうな所に・・・」

「ないと思うけどね」

「そんな言い方・・」


私は近くにあったモリを拾う。


「大丈夫、私がついてるから」

「・・・」

「目的地は図書館ね」

「図書館?」


正美さんが首をかしげる。


「調べものならここしかないでしょ?」

「調べもの?」

「ええ、もこうなったら調べてなんとかするしかないでしょ?」


私は正美さんの手を引いて立ち上がらせる。


「なぜこの町から出られないのかも、どうして私たちが27年前にいるのかも、わからなきゃどうにもならないでしょ?」


私はそう言ってきた道を戻り始める。

正美さんが私のすぐ後ろを、震えながらついてきた。

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