第20話◆元魔王、国王様に会う
「ぱぱー!赤頭のベンジャックってネームド倒したのでお小遣い下さい!」
「やぁ、メル君。お手柄だったね。いくらほしい?」
「……討伐報酬だけでいいです」
「残念だな。ここぞとばかりに息子にお小遣い上げたい父親心を汲んでよ!」
共同駐車場から出て幌馬車で一日ちょい、僕らは王都までやってきた。
本来なら王都にある冒険者ギルド本部か、検問所での引き渡しになるんだけれど、検問所の兵士さんが僕の顔を見た途端、王城までそのままお進みください、ってほぼ顔パスで通されてしまった。
ちなみに行動駐車場を出た所で変装は解いているので、僕以外の全員は素顔のままだ。
なので、王城について門番の兵士さんに声を掛けたら、にこやかにそのまま通された、というわけだ。
なんだこの自動システム。
で、あれよあれよと謁見の間ではなく、国王のプライベートスペースまでやってきたわけだ。
「顔パスでここまでつるつると進んじゃったんだけれど?セキュリティどうなってるのここ」
「やだなぁ。君の顔位騎士団や末端の兵士まで覚えてるに決まってるじゃないか。君、国王の息子でもあるんだし」
「そういうものなの?」
「そういうもんだよ?」
そういうものなんだ。
「エクセル兄上もこの度はメル君と同行したようで、有難うございます」
「いやいや。メル君といると美味しい物も食べられるしいい勉強になるよ。流石元異世界帰りの魔王様だねぇ」
「召喚勇者様方の国で色々と勉強してきたようなので、こちらとしても知識の提供や発想力は有難いと思ってますよ」
まぁねー。
日本に転移してまず、良い所の企業の孫ポジをゲットして、レベルの高い教育を受けるために小学校から全寮制かつ一日の半分は勉学と部活に消費される小中高大一貫な有名進学校に入っただけはあるからねー。
ちなみに部活は読書部と映画鑑賞部でした。
「てことで、赤頭のベンジャックていう所の一味を討伐して、貯め込んだお宝も持ってきたんだけれど」
僕は私設駐車場と共同駐車場のレポートを出して、状況や改善策を話しつつ、そこでジャイアントボアと山賊討伐の話をした。
「赤頭のベンジャックは冒険者ギルド本部でも頭を悩ませていたよ。神出鬼没だし頭目以下も手練ればかりだからね。それを君が一掃した、と」
パパ……オルティア国王はちらりと僕の隣に控える正宗を見た。
「正宗と申します」
「アリスの兄弟だよね?」
「はい。元は魔王エンディア様より『1』と呼ばれておりました。此度はメル様のサポートをするべく、魔王国より馳せ参じました」
正宗は控え、頭を下げたままそういった。
「『1』って……、メル君……ないわー」
「あの時は仕事をサポートさせる
うう、当時の僕に名前をひり出すようなバッファがあるわけないじゃないか……。
日本のブラック企業すら、生ぬるいと思える現場だったんだもん……。
「そうか。他の
「『4』は魔族国貴族であるソルティーナ・ファウンエヴァー様の個人的友人兼護衛としてライズ家におります。『2』と『3』と『5』はまだしばらく各国にいますが、その内ライズ領へ集まるかと」
「そうか。もし来たら挨拶したいな。メル君の父親として」
「かしこまりました、一席ご準備いたします」
要するに、今の僕の父親は自分なんだからね!っていう話をきっちりと通したいんdなろうな。
元魔王である意味今代召喚勇者である僕は立場が色々とあるようだし。
「で、赤頭のベンジャックの報酬金なんだけれど、僕としても国内で悪事を働いてたから上乗せ報酬を出すよ。全員で11人だっけ?」
「うん」
「じゃあ金貨110枚渡しとくよ。宰相の判子もらったらそのまま財務大臣の事務所いって決裁してもらって」
「まって。本来はいくらなの?」
「まとめて金貨30枚」
「金貨50枚でいいから。書き直して!」
すーぐ息子にお小遣いくれようとするんだから!嬉しいけどね!!!
その後、お宝を一度宰相に預け、所有者が解った場合は買い取りをするかどうかの確認、所有者不明の物は一か月後、そのまま返却となった。
ほぼ返却になったのを見ると、もしかしたら他の国からの強奪品かもしれないなぁ、とか思ったりした。
こわいこわい。
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