元魔王は領地を経営する

葎璃蓮

第1話◆元魔王、領地経営する

 はい、こんにちわ。

 ヴャンメルク・ライズです。

 魔王関係をクリアしてお家に帰ってきたらパパが国王になってました。

 謎ですが謎でもないんだろうなぁ。

 順当な繰り上がりとか能力的にみたりとか、年齢とかアレコレソレナ二全部含めたら、パパしか国王になれんかったやつや。

 ちょっと前、王族のお姫様が降嫁して公爵家が興り、その孫が自力で伯爵家興して領地貰って、かつ王都冒険者ギルド本部のサブマスターやってたとか、そら愚王が廃されたあとは次期国王候補の筆頭に名前上がるよな?と。


 てことで、元魔王で勇者との戦いで緊急回避転移したら地球の日本にいて、さらに転移ログてゆーか魔力道のパスが繋がったままだったので、次代の魔王を倒すために愚王が勇者召喚したらまたこの世界に来ちゃった僕は、パパの協力で養子に入ったり、件の魔王のこともクリアしてったんだけどね。

 帰ってきたらパパは国王だわ、今まで管理してた領地上げるから経営よろしくとぶん投げられた訳ですよこれが。

 でも、どうせこの世界にいるしかないので生きていくためには働きましょう。

 元魔王といっても、内政向きで国の復興優先のために魔王として選ばれたので、やりようはいくらでもあるしね。


 さて、今日も元気にお仕事しますかね!とベットの上でのびーとやってたら、寝室の扉が開いた。


「おはようメル君、今週の新聞と手紙と届いた書類よ」

「ありがとう、リーチェ。体はどう?」


 僕の言葉に、傍まで来たリーチェは大きくなったお腹をさすった。


「ポコポコ蹴ってくるのよ。活発なところは誰に似たのか⋯⋯」

「いやー。僕としてはリーチェに似てて欲しいんだけどねぇ」

「それでも活発なのには変わらないわね」


 くすくすと2人して笑う。

 僕が領地に来て半年過ぎたあたりで結婚式を上げた。

 相手は魔族国帰属のソルティーナ・ファウンエヴァー。

 ファウンエヴァー家の暫定当主だったが、正式に家督を弟に譲ってからの輿入れになった。

 それともう1人。

 僕がこの世界に戻ってきてからの付き合いで護衛としてずっと一緒に居てくれたルリチェ。

 対外的なこともあり、第1夫人がソルティ、第2夫人がリーチェとなっている。

 つまり、正式な場で表に出るのはソルティだけど、その分リーチェには自由にしてて欲しいと3人で決めたことだ。

 そして、先に妊娠したのはリーチェで、これはソルティからの申し出だった。


「魔族の寿命はヒュー(人間族)のおよそ3倍、純粋な魔族の貴族ともなれば5倍になります。なのでリーチェの後でいいんですよ。私は領地経営の方が興味ありますので」


 と。

 さすが前世元日本人派遣事務職系OL。

 この世界じゃ文官数職分の事務処理を物凄い勢いで捌いてやがる。

 必要だろうからとでかい電卓とそろばん、判子数種類にバッテリーとパソコンとプリンターを用意したら水を得た魚のように執務室の住人になった。

 ベル君から貰った異世界通販のスキル、ほんとありがたい。

 ワーカホリックぶり返したソルティを休憩させたりご飯食べさせてり寝かすのが僕とリーチェの日課になっている。

 なにせよ、元気な子を産んでくれればいいな。


「パパー!ごはんたべにいこうー?」


 寝室の扉からひょっこりと姿を見せたのはもう1人の娘。

 ふわふわの白い髪は光の具合で虹色に光っている。


「おはよう、グラティ。着替えたら行くからリーチェと食堂で待っててくれる?」

「はぁい!リーチェおかあさん、いこうー!」

「そうね。では先に待ってるわね。ソルティ様も回収してくるわ」

「うん、お願い」


 リーチェの手を引いて出ていったグラティも、最初に人型に変化した時よりも大きくなっている。

 娘、といっても本人(本馬?)は馬であることを誇りに思っているので、養子の件はスッパリと断られてしまった。


「僕、パパの子を乗せて走りたいし、お家に何かあったらパパを乗せて得意げな顔で戦場駆け巡りたい」


 だそうで。

 馬としての意識が高い。

 娘であることには変わりないので、これから産まれてくる子達のいいお姉さんになってくれそうだ。


 さてさて。着替えも済んだし食堂に行きますかね。

 今日の朝ごはんはなんだろうなぁ。

 こないだ保管庫パントリーにお米10袋とお味噌やら醤油やら詰め込んだので和食だといいな。


 今日も一日、頑張ろう!

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