俺たちが普通の恋愛なんて無理だと思った

@shnknt

第1話人気者

 桜が咲き乱れる季節。ここ葉桜高校ではこの春入学してきた一年生のクラス発表が正門近くで行われていた。

 自分が何組かを確かめるためだろう多くの人が集まっていた。俺もその中にいた。

「一組か、高校生活は、静かに暮らせるといいんだけどな」

 そんなことを呟いて自分のクラスのに向かった。

 クラスに入ると前面黒板に座席表が張り出されていた。

 自分の席を探すと窓側の1番後ろの席だった。席順を見るに名前順ではないようだった。

 自席に座ると机に伏せ寝る体勢に入ったその直後だった。クラス内に歓声が響き渡った。何かと顔を上げるとドアの前に腰まである長い髪をなびかせる1人の女子生徒が男子生徒たちの可愛い、綺麗などの言葉にと困ったような表情をして立っていた。

 俺の近くでひそひそと話していた男子生徒によると今年入ってきた一年に可愛い人がいると朝から噂になっていたそうだ。

 「俺としてはあまり関わりたくない人物だな」

 そう呟いた俺は、嫌な予感がした。

 だが気にすることなくまた、寝る体勢に戻る。

 体が揺すられる。いつの間にか寝ていたようだ。横から声がする。起こしてもらったお礼を言おうと思い起きて横を向く。そしてそこに座っていた人物を見て先程の嫌な予感が的中したのだと思った。

 そこには、先ほどの注目を浴びていた女子生徒が座っていた。

「ありがとう」

 お礼を言うと横の女子生徒はにこりと微笑み先生のする入学式の説明を聞き始めた。

 おそらく俺が入学式の際に困らないように起こしてくれたのであろう。

 担任の入学式の流れや入学式後の説明を聞き、入学式の会場である体育館へ向かい。入学生入場の合図と共に体育館の中に入る。

 中に入ると、体育館後方には保護者、前方の両端には教師や来賓の人たちがパイプ椅子に座っていた。

 全ての入学生が事前に教えられた席の位置に着くと着席の合図があった。

 そして、入学式が始まった。初めに校長先生、学年主任、生徒会長の話があった。

 入学式が終わり教室に戻ると自己紹介をすることになった。

 順番に発表していき、俺の順番になった。

翔野しょうの奏多かなたです。よろしくお願いします」

 適当に自己紹介をして再び席についた。

 他のクラスメイトの自己紹介を適当に聞き流しているとさっき起こしてくれた噂の美少女の番になった。

岩尾いわお雪芽ゆきめです。よろしくお願いします」

 有名なだけあって自己紹介が終われば大きな拍手が上がる。

 が、雪芽が髪をかき上げた時に見えた手首の傷に胸が痛くなった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る