Chapter.2『花も恥じらう白昼の告白-紫音&美星乃-』
「観念しなっ!!」
「い、いやだっ!!」
二人の追いかけっこは飽きずに今日も繰り広げられる。少し栗色がかったショートボブを揺らしながら
その姿はまるで往年のアニメでネコとネズミの追いかけっこの様。教室の中をくるくると駆け回る二人を見詰めるクラスメートたちの視線は『またかい』と冷めて雰囲気で誰も気にする者はいない。高校生活がスタートしてからの恒例行事は滞りなく繰り広げられた。
しかしその日は展開が違った。ワンパターンも磨けば光ると言う事なのだろうか、何も無い床に
「ふっふっふ、神様は私の味方なのだよ美星乃君」
「そ、そんな事は無いと思うぞ」
「じゃぁこのシチュエーションが発生している理由を四百字詰め原稿用紙三枚以内で述べて見よ」
「で、出来るか!!」
汗ばむ肌とぎらつく瞳に怯える美星乃を見詰めながら紫音は彼女のブレザーの胸元に持っていたラブレターをするりと差し込む。そして大きな溜息を一つ。
「はぁ~~~~もう、思いを遂げるとはこのことだね」
「な、何言ってんのよ、こんなの物受け取れる訳無いじゃない、だいたい私達、お、女の子同士じゃない」
「愛が有れば性別なんて何の障害にもならないわ」
「私には無い~~~っ!!」
「人生は長いから」
そう言って紫音は美星乃の頬にちゅっと口づけしてから彼女の前で居住まいを正す。
「まぁ、せっかく書いたんだから一応読んでみてよ。それで私の事が気に入らなかったらすっぱり諦めるからさ」
紫音にキスされた頬に掌を当てながら視線を送る美星乃の視線に飛び込む紫音の妙に爽やかできらきら見えるその姿に思わず見とれた自分にはっとして胸元に差し込まれたラブレターを突っ返そうとしたのだが、そのタイミングは僅かに遅く、紫音はくるりと踵を返し、汗と笑顔の残像を残して彼女は教室から出て行った。
……そして、美星乃の心に吹き込む不思議な涼風。
★★★
帰宅して自室に籠ると勉強机の椅子に座って鞄からラブレターを取り出してその封を切る。妙に指先が汗ばむのを感じながら開いた手紙の文面を読み始めるとそこに羅列されているのは熱くてちょっと歯が浮きそうな愛の言葉たち。目を細めながら読み進める彼女の右手は制服のスカートの中にゆっくりと差し込まれて行く、紫音の笑顔を思いながら。
Chapter.2『花も恥じらう乙女の告白-紫音&美星乃-』 End
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます