白百合たちの美々っと

優蘭みこ

Phase.1『昼休み』

Chapter.1『OLたちの戯れ-茉奈美&花紗音-』

「キスしていいですか主任?食後のデザートと言う事で」

「……ん、どうぞ」


間も無く梅雨入りの曇天模様。紫陽花はまだ少し白っぽいが職場の建物が入るビルの入り口に設けられた小さな花壇に揺れる花たちは少し高めの湿気を含む梅雨の走りの風に揺られる。奈美なみの淡いピンクのグロスがキラキラと輝く唇に花紗音かさねは吸い込まれる様に口付ける。


「うふふ、ちょっぴり塩味」

「もう、主任ってば……」

「主任じゃなくて、名前で呼ぶの」

「じゃ、じゃぁ、茉奈美……さん…」

「“さん”は無し」

「……あ、はい」


 茉奈美の言葉に花紗音はほんのり頬を朱に染める。あかねいろのアンダーフレームの眼鏡のブリッジ部分を右手中指で押し上げながら見せる茉奈美の笑顔。仕事の出来る上司の表情は影を潜めて柔らかで取っ付きやすく柔らかで誰にでも愛されそうで屈託くったくがない。そしてその表情に癒されながらぽふんと抱き着き花紗音は大きく深呼吸。


「茉奈美、良いにおい」

「そう?いつも通りのコロンと化粧品だけど」


 抱き着いた茉奈美が着ているビジネススーツはクリーニングしたて独特のにおい、それに混じるコロンと化粧品……そして女性独特の甘い体の香り。


「続きはお仕事終わってからね」

「……え、あ、はい」


花紗音の頭を撫でながら微笑む茉奈美は見も元に口を近づけると小さな声で囁いた。そして今夜の愛を思う花紗音は耳まで真っ赤に染めながら小さくこくんと頷いて見せた。


「眠らせないからね」

「う、うん……」

「ちょっとだけ予行演習しようか……」

「……ちょ、ちょっとだけね」


 部下と上司の関係を忘れて素に戻る花紗音に向ける茉奈美の視線は愛おしさに溢れ、頬に口付ける唇は綿花の様に柔らかく温もりに溢れていた。そして、曇天の空から漏れ出す陽の光は二人の姿を会議室の中にぼんやりと浮かび上がらせ淡い愛を照らし出す。


Chapter.1『OLたちの戯れ-茉奈美&花紗音-』 End

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る