第3話 吸血鬼の末裔

男は女と共に部屋に入り、ソファーにそのまま二人倒れこむ。

(カメラマンはあえて、人物の顔はださない)


「君に一目ぼれしたんだ」彼は、容姿も含めて魅力的な男だった。

(その時、異なるアングルのカメラを使うことで表情の変化の違いをもたせる)


「でも、今日あったばかりだわ」女はためらいながらも、男の不思議な魅力に吸い込まれるように力が抜ける。


「そんなこと俺たちには関係ないさ。きっと、この出会いは運命なんだよ」男は女の身体に覆い被さり、白い美しい首筋を撫でるとキスをした。


次の瞬間に男の顔は吸血鬼に変わり血走った眼『ここは、特殊メイクをした別編集したものを組み合わせる』女の首元にするどい牙を差し込む。

(後ろから光を当てることで幻想的な光を演出する)


「はーい、カット。今日はここまでです。お疲れさまでした」その声に二人はゆっくりと起き上がる。


「ちょっと。連さんいつもいってるけど、また歯が伸びていない?この吸血鬼もの大好評でシリーズ化されるのはいいけど、毎回傷が治らなくて大変なのよ」彼女の首筋には、うっすらと血が滲み出ている。


「すまない」これは、昔からの慣習で…とは、さすがに言えないが。それに、生の血は流石にまずいな。帰りに、歯医者に寄って行くか。



◆◆◆◆


馴染みのチノリ歯科医院の待合室には、閉店まじかということもあってか俺一人しかいなかった。


「戸狩野 連さん、処置室にお入りください」


処置室の仕切りで区切られている奥のベットに案内され横になる。


「やあ、連さんいつもの処置でいいかね」赤井先生とは、かれこれ100年以上のつきあいになる。


「ああ、共演者が傷が治らないだの痛いだのうるさくてね」


「いっそのこと、これ以上伸びないように薬で加工もできるんだが。他の方法として、根元から抜いてまた生えるまでの間は時間を稼ぐこともできる」そう、吸血鬼の歯は抜いても生え変わる。


「いい時代になりましたね……先生。この世の中、吸血鬼が人間と共存できる日がくるなんて」


「ああ、まったくだ。何事もテクノロジーのおかげだな。」


◆◆◆




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