おひとり様は夢をみる
うるた
人生そんなに甘くない
若い頃の私はこう思ってた。
「愛嬌と云うのは自分より強いものを倒す武器」
でも実際は
「愛嬌と云うのは自分より強いものを倒す脆い武器」
だった。
愛嬌なんて所詮期限付き。
歳をとって仕舞えば簡単に褪せてしまう。
「せんぱぁい…これぇ、どうやってやるかわかんないんですけどぉ…」
「あのさ、それ、前も説明したと思うんですけど…」
「えぇ?そうでしたっけ?ごめんなさぁい!」
新入社員の桃山さんには申し訳ないけれど、
桃山さんを見てると昔の私を見ている気分になって、少しあたりが強くなってしまう。
「おいおい、そんなに強く言わなくてもいいんじゃないかぁ?」
うわでた。おっぱい星人の課長だ。
こういう人間は要領とか賢さとか、そういうものは一切求めていない。
胸だの、股だの、この女ならワンチャン狙えるかだの、そういうことで頭がいっぱいなんだろう。
「君さぁ、この子まだ新入社員なんだから?ね?わかる?」
「すいません…」
私はこういう奴らのせいで、自分の愚かさに気づくのに遅れた。
しかし、皮肉にもこういう奴らのせいで今まで甘い汁を吸えていたのだ。
最悪の皮肉だ。
私が脳内お花畑系ハッピー系女子だったのなら良かったのに。
こういう現実に直面しても本気でなんとも思わなかったのに。
計算高く育ってしまったせいで私は…。
この計算高さは中学生の頃に身についたんだと思う。
***
中学生の頃の私はこれでもかというくらい優しかった。
いじめられている子を庇ったり、先生の荷物を運ぶのを手伝ったり。
でも、この世界は優しい私に優しくない。
優しいだけ損をする。
いじめられている子を庇っていじめられて、先生に気に入られてセクハラまがいな事をされた。
私は気づいた。
賢くやらしい人間ほど、自分らしさを抑えんでいることに。
ああそうだ。
私が望んでいるもの手に入れるためには、その場にあった私を提供する必要がある。
こうして私、辻さとりは、
悲しきひとりみモンスターになった。
おひとり様は夢をみる うるた @uruta
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