お化け叔父さんのちょびっと怪談

加鳥三都

1.私の町のお化け館

季節の花々や、気持ちの良い緑が楽しめる四丁目の市立公園のそば。

静かな住宅地の片隅に、その館はひっそりと佇んでいた。


築何十年なんだろう?

もしかしたらママやパパ……いや、おばあちゃんやおじいちゃんの時代にもあったものなのかもしれない。


敷地を囲う錆の浮いた鉄柵の中は、手入れのされていない大きな木で鬱蒼としていて薄暗く、入り口の門から先に見えるのは、爽やかさのかけらもない深い緑のトンネルだ。

奥へ向かう石畳は、慎重に歩かなければダメ。

何て言ったって、足元は苔やら雑草やらが好き勝手に生えている。足の踏み場所を間違ってすべって転んでしまった日には、踏み潰した草の汁が服に染みを作るくらいは覚悟しなくてはならない。


そして、しばらく歩みを進め石畳が途切れると、視線を上げた先に『それ』は現れるのだった。


黒っぽく汚れた外壁。

古びてペンキのはげた木製の窓枠はボロボロで、取り付けられた鎧戸なんかは一部外れかけて風に揺れている。

金属の釘や蝶番の近辺に目をやると、錆びのせいでだろうか。まるで血が流れた跡のような模様が壁に浮き上がり、気味の悪さは更に倍増だ。


それは、すっかり寿命を迎えたような古い洋館であった。


傷んだ屋根の上で、カラスが『カァ』と不吉に鳴く。


そう、これが近所の人で知らない人はいない……。


我が町で『お化けやかた』と呼ばれ、人々に親しまれている建物だった。

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