【影踏み悪奇の幻楼譚】

一ノ瀬 瞬

第1話

【第一話 始まりのシュピラーレ】


これは昔昔の話

【1人の人間】と【悪魔】がいました


其れは素敵な世界とは程遠い戦が絶えない

残酷で凄惨な世界での御話

人間と人間の姿をした

悪意と死で動き続け人間を騙し殺戮する

【ヒトモドキ】との闘いの世界


そんな凄惨な世界の中で世界を傍観していた

悪魔の目に1人の人間が留まりました

人間は1人闘いの中

周りに鮮血の緋が広がっても

仲間が倒れ散っていこうとも

尚立ち上がって戦い続けて居ました

そんな姿を見て悪魔は人間に恋をしたのです


【其の人間】は暗い暗い夜の海の中

涙を流して残酷な空虚の空に乞いました

【力が欲しい】

【例え自分1人でも敵を殲滅できる力を】と

そんな人間に悪魔は

ヒラヒラと漆黒の翼を羽ばたかせ舞い降りて

歪な笑顔を浮かべ

【何も応えはしない空の代わりに】

優しく甘い声で応えました

【君が望むなら、君を守る為に】

【君に…君だけに力を】

悪魔は自分の身体を武器に変え

【人間の魂と引き換えに】一心一体となり

人間に悪魔の力を備えた武器で戦わせる事を

選ばせました


其れが此れから始まる【彼等に繋がる】

【終わり迄】の昔々の今へ続く【始まりの話】


[夜の街中にて]


???

『そっちに行ったよ〜レオちゃん〜♬』


???

『うるさっ…解ってるっての‼︎』

ビュンッとナイフを勢いよく

【黒い人型の様なモノ】に

まるで的を射抜く様に投げつける

だがナイフが確かに当たった筈の【其れは】

何もなかったかの様に

また【誰かを探すかの様に】

【殺戮する為】無機質にゆらゆらと動き出す


???

『あっちゃ〜?コレハコレハ…

【アビス級】…しかも【マガモノ】の

ヒトモドキじゃないの?』


レオ・アングリフ・シュナイデン

『ちっ…【アモン】の奴…どおりで

たかが【ヒトモドキ】を

【コレクション】にしたいって言ってた訳ね

【つぎはぎ】は知ってたわけ?』


小型ナイフとダガーナイフを両手に持ち

苛ついている少年がピリついた視線を向けた

目線の先の青年は

【成人男性並みの大型の鋏を持ち】にやつき

苛つく少年に悪戯を考えついた

子供の様な笑顔で少年に話返す


つぎはぎ

『まっさかぁ⁇あは…っあははは!

こんな【面白い事】

私が考えつく筈ないじゃない?

私もレオちゃんもアモンに

嵌められちゃった訳だ…全く

本当に何時迄も可愛い私達の心友だねぇ』


レオ

『相変わらず性格は俺より悪いね

ほんっとサイコーだよ。心友』


2人はお互いの顔を見つめ合い

くすりと微笑うと互いに武器を

【黒い人型の敵】に向け構え

呼吸を合わせて同時に距離を積める


つぎはぎ

『生憎、私達は帰りを待つ可愛い心友の為に

君を御持ち帰らなければならなくてね?

抵抗せずに、ヒトモドキはヒトモドキらしく

綺麗に切り飛ばされてね。左様なら?』


大型の大裁ち鋏で勢いよく【其れの首】を

斬り飛ばすが

まだ【身体だけでも動き続ける其れ】に

少年が【其れの背後】から

ナイフを心臓目掛けて投げ、

そして少年自らの手で体重を掛けて

【其れの心臓】格の部分を貫き破壊する


レオ

『気色悪いんだよ。【死人は死人らしく】

《死[土]に還りな》ってな?good-by…』


心臓格を破壊され

ようやく地面に倒れ伏した【其れ】を見て

少年は呆れた溜息を吐き

青年は柔かに【其れ】を抱き抱え回収する為

手をパンパンッと打ち鳴らすと

【人1人収納出来る大きさ】の柩が

何もなかった虚空から出てくる


つぎはぎ

『まさか【アビス級】を私達2人だけで戦闘

…相手にさせられるなんて…しかもマガモノ

ふむふむ…矢張り近くで見れば見るほど

美しい精巧な子だね…これは確かに

【コレクションにしたい】筈だ

ま…私は会議は寝ていたから聴いてないので

コレクションの話は初耳だったけどね〜』


レオ

『だから、あんだけ殴っても起きない訳だ

昨日も駆り出されてたみたいだから

眠いのも仕方ないとは思うけどさ

相方の俺が迷惑するから

アモンの命令の時位は起きててよね

アモン笑顔で睨んで…おっかないったら』


つぎはぎ

『あはは、仕方ない仕方ない

私とレオちゃんの仲でしょ?

アモンも赦してくれるさ、こんな御土産を

持って帰ってあげるんだからね…。

…さぁ…もう御休み…2度と…

君の眠りを妨げる事象は起こりはしない

ゆっくりと眠るんだよ

どうか黒薔薇の棺で安らかに』


棺に【黒い人型だった】筈の

首を切り落とした身体を入れ

最後に慈しむ様…弔いを捧げる様に

優しく棺に首も入れ、青年は首に口付ける

首は人間の女性の身体の一部に戻り

黒い影がなくなった人体に

棺に眠る様に安らかな表情で横たわる


最後に棺の扉を閉め

棺に口付け棺を抱え歩き出す


其の動作を見ていた少年は青年の行動に

理解ができないと、呆れた様に溜息を吐き

青年の真横、歩き乍らついて行く


レオ

『何時も思うけど、つぎはぎは変だね』


つぎはぎ

『おや?シンプルな悪口かな?刺さるねぇ』


レオ

『悪口じゃないよ。理解できないだけ。

何で何時もそんなに悲しそーに優しく

【ヒトモドキのカラダ】を棺にしまうのさ』


つぎはぎ

『ん〜…他の【納棺士】が

如何か?とかは知らないけれど…。

【ヒトモドキ】にされた理由が

【アクツキ】に死を穢されて無理矢理に

身体を起こされ利用されたのだから

ある意味でこれは、同情?…せめて

起こされ【死を穢されて冒涜された】のなら

私達【納棺士】が安らかに眠らせてあげたい

…そう考えてしまうから…かな?』


レオ

『...情…ね。…やっぱり、つぎはぎは変だね

俺は【そんな優しくなれない】よ

ヒトモドキに、そんな感情すら抱けない』


つぎはぎ

『レオちゃんは【人形師】だろ?

其れに俺だって長い付き合いだから

【レオちゃんの過去】は知ってるつもりだよ

無理に【ヒトモドキ】に情を抱け…なんて

薄情極まりない事は言えないさ』


レオ

『やっぱり変だね。つぎはぎは。』


そう戯れ合う様に…

だが、何処か影を纏う2人は

夜の闇へと溶ける様に消えていった


[デストルドー本部 第一特務執行係対策室]


アモン

『遅い。【アビス級位】で

俺の有益な時間を無駄に蝕み喰うつもりか?

レオ…つぎはぎ?』


【アモン・ジルバ・フリューゲル】

【デストルドー本部 第一特務執行係大佐】

通称:黒薔薇柩の鬼帝


レオ

『あのねぇ…アモン?

【アビス級】は聞いてない。初耳

人間未知の情報には体の慣れってのが

追いつかない生き物なの!

その場でパパッとサクッなんていかないの!

御望みの御土産を!

御持ち帰りしてきたんだからっ!

これで機嫌直してよね』


【レオ・アングリフ・シュナイデン(本名秘匿)】

【デストルドー本部 第一特務執行係 所属】

通称:緋薔薇園の人形楽士


つぎはぎ

『ほらほら2人とも仲良く仲良く〜♬

遅れたといっても、たったの3秒ですよ〜?

だから、そうカリカリせずに

此の美しい御姫様をど〜ぞ?ダフネに頼んで

【御目かし】もしておきましたから

綺麗な綺麗な御姫様になっていますよ〜』


【つぎはぎ(本名秘匿)】

【デストルドー本部 第一特務執行係所属】

通称:黒薔薇棺の制裁者


アモン

『ふむ…矢張りか…今回ばかりは無能な上が

言っていた通りの様だ。』


つぎはぎが柩の蓋を開け【死体となった】

身体を見せると、アモンはまじまじと見た後

ある種の核心を得た様に呟く


レオ

『なに?なんかまたアモンに言ってきたの?

無能な命令しかできない

【元老院に居座ってる、化け物爺さん達】』


アモン

『…あぁ。まぁ大した話ではないと

軽く受け流していたが、偶には化け物供の

話も的をいるものなのだな。』


つぎはぎ

『2人とも御口が悪いよ〜?

元老院の長様達なのだから邪険にしちゃあ』


レオ

『で?その【化け物供の】意見って?

わざわざ、御土産持って帰ってきたんだから

聞く権利あるよね〜?アモン?♬』


つぎはぎ

『わぁ。軽く無視されてる』


アモンは軽く溜息を吐くと

自らの【玉座】の様な席にゆっくりと座ると

レオ、つぎはぎ両名を見つめ

不機嫌そうな面持ちで話し始める


アモン

『気に食わないが。

我々【第一特務執行係】に任が下った

長ったらしい話を抜きに簡潔に話すなら

第一から第七全動員で

【本来のヒトモドキ処理】に加えて

我々【特務執行係】【デストルドー】に

【叛旗を翻そうと画策する阿呆供】も

【見つけ出して掃討しろ】と…な。』


レオ

『は…?【見つけ出して】って…

まるで【デストルドー本部に裏切者】が…』


つぎはぎ

『居るんだろうねぇ…。

その【叛旗を翻したい裏切者】サンが』


アモン

『まぁ、死体遊び[御人形遊び]を

此の本部でもしたい頭のネジが飛んだ

【阿呆が湧いた】ただ、其れだけの話だ。

…だからこそ。

俺達のやるべき事は変わる事は無い』


レオ

『…気に入らないけど。そだね…。

生には生を…【生が死を遂げる権利】を』


つぎはぎ

『死者には安息の眠りを

死には死を。死者の眠りを妨げる者には

【死の制裁を】』


アモン

『この狂気に満ちた世界の中で

死を冒涜する概念は滅殺させてみせる

死には死を…死を遂げたものが

生者の様に動いてはならない

死には死を【生には死を遂げる自由】を

【生者は生者として弔わられる権利】を

元に戻そう…世界の...【生死の理を】』


ただ真っ直ぐとした視線と

3人の意思は固く強く言葉と声に乗せ

再び固く固く…3人を結び合った


[???]


???

『あはっ…!あははははははっ⁈

たのし〜。たのし〜ね?ねぇ?【 】』


???

『私は全く楽しくありません

計画に余計な私情も感情も不必要です

計算された世界が崩れてしまう』


???

『相変わらず御堅いなぁ?

…それにしても…あはっ…いつかな

いつかなぁ?あの子達…いや…

デストルドー本部全員と

戦いあって…ボクだけの御人形に出来るの

あははは!楽しみだなぁ…すっごく

すっごく…楽しみだなぁ…。』


???

『楽しみ…なのだったら余計な事を

喋っている暇なんてないんじゃ無いの?

【 】』


???

『うるさい。それ以上ボクに意見したら

オマエもボクの御人形にしてやるから』


???

『はいはい…っと。じゃあ

そろそろ始めようか…。』


???

『【死には生を】

【生者に死を】【死者には復活の狂宴を】

今こそ【生死の理】を改変する時だ

俺達に正義は要らない。

不実也と…不道徳でも構わない

俺達に俺達の【理想と理を改変する権利を】

…さぁ。partyの時間だ。愉しい楽しい

nightmare partyの時間を

楽しんでくれたらいい…。』


???

『御人形遊び楽しみだなぁ。

可愛い可愛い…御人形』


???

『凄惨な悪夢を必ず

果たして死を冒涜しているのは何方か

何方かが踊り狂うまでは終わらない

悪夢の宴』


???

『……嗚呼…此れからが本当に

楽しみだね…【デストルドーの皆様】

…あは…はははははははははははははは!』


歪な高笑いと黒い人影達は

ただ宵闇の中

此れから始まる狂瀾の宴へ心を躍らせ

舞い踊る様に狂気の笑い声と共に消えていく


さぁさぁ悲劇的か…救済劇になるかは

観ている貴方次第…だからその目を見開いて

此れから始まる演目を確と最後迄

刮目して頂ける事を心より願って

開演といこう…。


愉しい楽しい劇を…始めよう。


【続く】

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