第54話 聖女の苦悩

聖女の苦悩


それから2日経ち定期馬車に乗ってブリュッカス王国の王城へと帰還した。

セイヤは何とマリシーナ様に取り入り、商隊護衛の仕事をするため訓練することにしたらしい。

勿論ロック隊長に厳しく指導してもらう事が前提で、朝昼晩とまずは商隊の小間使いから始めるのだそうだ。

まあノブユキが直接訓練してやらなくて済んだので今の所放置するつもりだが、一応マリシーナ嬢には、セイヤの事は注意してと言ってある。

善行LV3と言う事は、そこそこクズだと言っているに等しい、いつ人を裏切ったり悪の道へ逃げ込んだりするのか分からない。


「王様からお話が有るそうです」長官

「分かりました」


王城に併設された建物に一晩泊まることになり、現在は専属のメイドさんが身の回りの御世話をしてくれている。

はっきり言うと恥ずかしくてたまらない、多分顔は真っ赤なのではと思う。

勇者セットはストレージにしまっており、代わりに貴族風の御召し物を着るように勧められた。

まるでどこぞの王子様風だ、それをメイドさんたちが3人ついて着させてくれるのだが。

顔が近すぎる、しかもメイドさん達は鼻をヒクつかせている、俺そんなに臭いのか?


「クンクン」

「臭いですか?」

「いいえ」

「失礼します」

「あ そこは自分でやります」

「いいえ、勇者様これはメイドの仕事です」


そう言いながら下着を全部脱がされてしまう。

最悪だ…

この世界のメイドはこちらの質問を無視するのか、それともこれが標準の仕様なのか?見ているとおれの恥ずかしいところを見ても、顔色一つ変えないのが少しショックだった。

(確かにこの状態は標準なのでしかたない…)


「失礼いたしました、それではまいりましょう」メイド


それぞれに頭を下げ、メイドの一人が先に立ち俺は後を歩いて行く。

前回訪れた時と同じ謁見の間、そこには聖女もいた。


「勇者ノブユキ様のおなーりー」

「よく参られた、早速だが今回の任務、誠にご苦労であった」

「はい」

「まずはその方に褒賞を与えようと思う」

「あー」

「いらぬなどとは申すな、この褒美をそなたが受け取らぬと他の者が手柄を立てた時に褒美を取らすことができなくなるのでな」

「そうですか、ならば謹んで頂戴いたします」

「それでもう一つ頼みがある」

「何でしょうか?」

「我が娘の夫になるつもりはないか?」

「は~」


異世界だとあるある話なのだが、いやいやいつかこの世界とはおさらばするのに結婚までは無いだろう。

確かにH有りの世界ならそういう設定もありだとは思うが…


「まあ無理にとは言わぬがな、それと聖女殿にもお願いがある」


そういえば聖女からお願いされていたこととはなんだろう。


「我が子 第2王子との婚姻の儀はいつまで待てばよい?」

「それは…」

「な!」


そういう事か、マリカはいわゆるお鍋ちゃん。

まさかこっちの世界で結婚を迫られているとは、勇者や聖女ならあるあるだが。

彼女いやマリカにとってみれば勘弁してほしいと言った所。


「今はようやく邪神教から救い出されたばかりです、もう少しお待ちいただければ…」

「うむむ もう王子は待てぬと言っておるのだがな」

「それって無理やり?聖女様は了解しているのでしょうか?」

「勇者殿には関係ない話では?」

「いやいや、聖女様も転生者だと伺いました、まるっきり関係ないとは言えません」

【ポーン】

【クエストが発生しました】

【聖女を連れ出し逃げ延びろ:捕まれば終わり】

(でた・クエスト)

「その方が娶るとでも言うのか?」

「それもありですね」

「なんと!」

「それよりもまずは聖女様の本当の気持ちを聞いてからです、無理やりならば私も反対します」

「ぐぬぬ、もうよい」


そう言うと王様は謁見の間より退場してしまった。

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