第45話 王国で事件発生
王国で事件発生
スチャロンダーグ商会と共にブリュッカス王国入りしたノブユキ、そこはかなり栄えている国だった。
「へー綺麗な国ですね」
道の両側には花壇が有り、そこには花が延々と植えられている、建物は白とオレンジで統一され、殆どの民家は2階建てだった。
国境の町からは6つほどの町を通り二日かけて中央都市である王都ハイロンへとやって来た。
「このまま王城へ入るわよ」
「え?普通は…」
「俺達は別なんだよ、頼まれていた品は王様への献上品だからな」
「そうなんだ…」
「それにもしかしたら、勇者様にも関係のある話よ」
勇者あるある、もしかしたら何か仕事を頼まれてしまうのかもしれない、魔王を退治してほしいとか。
悪人から姫を守ってほしいとか言われるのだろうか?ここまでにもいくつかクエストをこなしたが。
この世界のクエスト、個人用と組合用は別らしい。
途中の組合でカードをかざしたが、100個こなさないといけない個人クエストは組合のカードには記録されなかったからだ。
まあそれは当然かもしれない、組合のクエストもこの世界から解放される条件に含まれていれば数日でクエストが完了してしまう。
そんな事を考えていると案の定やはり個人クエストが発生した。
【クエスト発生】
【聖女を助けろ:邪神教に捕らわれた聖女を助けろ、まずは王様から話を聞こう】
「マジか…」
荷馬車3台は王城の門をくぐり厩舎のある馬車専用の停留所へとやって来る。
どうやら今回載せている品は全部王城で降ろされるらしい。
「全部なんですか?」
「ああ通常の貿易品は最初の町で降ろされ、そこから各地へと分散して運ばれるが、今回俺達が運んできたのは全部王城へと運ぶのが仕事だったからな」
「さあ行きましょ」
「どこへ?」
「謁見の間よ」
御者に後を頼んで番頭のマリシーナ嬢、それに護衛のスチャロンダーグ商会専属護衛部隊の5人と共に衛兵に先導されて謁見の間まで歩いて行く。
所々には鎧が飾られ、その間には絵画や地図や肖像画が飾られていた。
「スチャロンダーグ伯爵令嬢マリシーナ様 おなーりー」
「スチャロンダーグ商会所属、護衛部隊5名様及び勇者ノブユキ様 おなーりー」
(ん 隊長たちより俺の方が上なのか?)
どうやら聖女の捜索は確定事項になっているらしい。
王様の前まで行くと、マリシーナ嬢もそして護衛の5人も膝を付くので俺も慌てて同じように膝を付く。
「ご苦労で会った、途中山賊と大蜘蛛に出会ったとか、無事で何より」
「おいたわり頂きありがとうございます」
「うむ、面を上げてよいぞ」
「はい」
「ところで、来訪して早々もう一つ仕事を頼みたいのだが…」
「王様!」
王様の横には宰相もしくは相談役とみられる若い男性が耳打ちをしている、地獄耳のスキルでもあれば聞こえただろうけど、まだノブユキは視聴覚系のスキルは手に入れていない。
「済みませんここから先は勇者殿だけに話があるようなので、マリシーナ様それに護衛隊の方々には別室でお待ちいただけますようお願い申し上げます」ファルブン近衛隊長官
マリシーナ達はそう言われて一礼し、入って来た入口から出て行った。
「勇者ノブユキ殿、頼みを聞いてもらえないだろうか?」
「はい、どのような?」
「わが国には聖アルリアス教会と言う信仰の拠り所があるのだが、その信仰は聖女を敬い奇跡を信じるのが教義でな、ところがその聖女が今は行方不明になっておる」
「聖女を探してほしいと?」
「もう2か月も探しておるのだが、一向に手がかりさえ掴めぬ」
近衛長官が王様の後を継いで話し出す。
「我々も探していたのですが、どうやら邪神教が関わっているらしいのです」
「なんで私に?」
「話しても?」長官
「かまわぬ」王様
「実は聖女様は転生者なのです」
転生者=この世界に他の世界から来た者達の事を指すようだ、ラノベの世界ならばよくある話だが。
ここはゲームの世界なので現世から取り込まれた者達を転生者と呼ぶらしい。
「勇者様も転生者だと聞いております」
(いや別に…そうなのか?そういう設定なのか)
「は はあ」
「その証拠に必ず異世界の技を使えると聞きます」
「見分け方でもあるのですか?」
「その冠は勇者の印だと伺いました」
(やっぱりこれが原因だったんだ)
「はあ…」
「転生者にはお互いに引き合う以心伝心とかいうスキルが有るとか」
(聞いてないぞそんなの…)
「どうか頼まれて頂けないでしょうか?」
「かまいませんが、何か手掛かりになる物は無いでしょうか、聖女様の私物とか・・・」
そこからは謁見の間を出て、聖アルリアス教会の聖堂へと向かう事になった。
聖女の私物などは持ちだし禁止となっており、教会の教主達の了解のもとでなければ見せられないことになっていると言う。
(細まけー設定だなー)
「こちらです」
長官の後を付いて歩いて行く事7分、教会の聖堂は王城からは割と近くに建てられていた。
その敷地は王城とほぼ同じぐらいの広さが有り、一部は共用になっているようだ。
「全ての民に愛の手を」信者
「愛の手を」長官
「勇者様を連れてきました、教主様にお目通しを」
「分かりましたすぐ伝えます」
信者の一人がすぐに建物の中へと入って行くと、中から教主と言われる人物が出て来る。
「よくいらっしゃいました、どうぞ私の後を付いていらしてください」
建物の中へと入り、聖女が使用していたと思しき部屋へと通される、そこには質素だが女性らしい家具が置かれていた。
(いい匂い)
テーブルの上には日記のようなものが置かれており、どうやら聖女は毎日記録を付けていたのかもしれない。
「これは?」
「どうぞお読みください」
「良いんですか?」
「聖女様は勇者様が来たら見せても良いとおっしゃりました」
(これはそういう設定なんだよな、人の日記とか気が引けるんだが…)
「分かりました」
恐る恐る聖女が書いたと言われている日記を開き、まずは最後に書いたページから読んでみた。
《先日またもや私が運営している孤児院に取り立てが来た、既に支払いは済ませているのになんで?》
《どうやらこの領を治めている領主はここに孤児院が有ると言うだけで賃貸料と称して金を取り立てているようだ》
《調べてみるとどうやら裏にこの国で暗躍している邪教徒たちが関与しているのがわかった》
《ようやく尻尾を掴むことができたが、中々証拠を揃えられない、後もう一つ証拠さえあれば邪神教とのつながりを証明できるのに…》
そこには邪教徒が関わっているであろう文章が読み取れる、だが証拠は何処に?
引き出しを一つ一つ開けてみると鍵が一つ。
「この鍵は?」
「この建物の中にはドア以外に鍵のかかる場所は有りません」
確かに見回してみてもタンスや引き出しには鍵穴は無い、だがこういう時の秘密の隠し場所には心当たりがある。
机の引き出しを全部開けてみた。
「やっぱり」
「何かございましたか?」
「ちょっとまって」
奥の方に取っ手が一つ、だがそこには鍵穴が無い。
机の下にもぐると1か所穴が空いている場所がある、そこへ鍵を差してみた。
「カチャ」
鍵を回すとシリンダーのような物が鍵の先に付いてきた、これで引き出しを引く事が出来そうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます