第7話 合コン後日

合コン後日


山口さんはいつの間にか戸隠さんをトイレへと誘い、その後は帰ってしまったのをミツルやアキラ先輩は怒っていたのだが。

大学で他の先輩に聞いた所、アキラ先輩のいつものパターンだと言う事で話は終わった。

いわゆる作戦失敗と言う事。

いつもなら先輩の手下数人を連れて行う合コンだが、今回はミツル主導だったので勝手が違ったのだと言う。

川上君はいつの間にか慣れない酒を飲んでつぶれてしまっており。

帰りは俺が送って行くことになった、もちろんミツルは彼女の一人である夏生さんとラブラブで帰り。

先輩は途中で女性からの電話を受け消えてしまった。

秋元君が支払いを済ませると、残った5人は2台のタクシーに分乗して帰る事に。

秋元君と金城さんからはメアドを登録し合いその日の合コンは終了した。


「おいノブユキ、こないだどうした?」ミツル

「合コンの後か?普通に帰ったよ」

「ふーん」

「秋元何か言ってなかったか?」

「特に何も?」

「そうか…それならいい」


何を気にしているのか分からないが、もしかしたらATMが使えなくなるのを気にしているのか、それとも2人の関係はそれ以上なのか。

俺も深くは知ろうと思わない、特に秋元君がミツルに対して不平を言っていたわけでもないし、相談を持ち掛けられたわけでもない。


「また人数足りなかったら頼むぜ」

「金がある時にならな」

「それは俺も同じだよ」


学校が終わると本日はもちろんアルバイト、バイト先のレストランは今日も忙しい。


「信之君これお願い」

「はい」


伝票を打ち込むとモニターにメニューが表示される、そのレシピ通りに食材を温め盛り付けて行く。

厨房は本日5人で回しており、特に7時から9時までは休む暇もない。

ようやく9時半過ぎ辺りからオーダーも落ち着いてきて、ホールにいた山口さんが話しかけて来る。


「今日も、後で話あるから付き合え!」

「近場?」

「今日は話だけだから」

「分かった」


まるで舎弟のように扱われている感がぬぐえないが、もし彼女の物言いがもっと優しかったら。

俺はすぐに恋に落ちていただろうし周りにはそういう関係なんだと思われるだろう。

別にそれでもいいのだが、彼女の言葉使いは予想通りヤンキーだった。

午後10時、俺達は2人近くのファーストフード店へと入る。


「ここでいいか」


晩飯代わりのハンバーガーとコーヒーのセットを頼むと2階のイートインスペースへ、窓際の席に座り話を始める。


「話って?」

「死体が見つかった」

「誰の?」

「こないだの5人中3人」

「マジ?」

「マジ それからあいつらの彼氏も一人、行方不明になった」


それを聞いて俺は寒気がしてきた、もう5月の半ばを過ぎ気温は24度と言った所。

別にこのイートインスペースが寒いわけでは無い。


「ねえ、アプリで撮った写真って見られんの?」

「ああ みられると思うけど…」


そう言うとスマホを手にして写真が収められているファイルボックスを開いてみる。

AIでの画像変換を通して撮られた写真は3枚あった、だが1枚はいつ撮ったのだろう。


その写真には山口さんも写っているが見えるのは彼女の足のみ、他はその時に山口さんを押さえつけていた7人の姿、何故だか彼らの顔は5人がこちらを向いており二人は向こうを向いたまま。

まるで5人が写真を撮られるのを予期してこちらを向いているかのよう。

だが背景はカラオケボックスの中と言うより、どこかの拷問部屋であり周りには悪魔のような動物が飛び交っている。

まるで中世ヨーロッパの拷問の最中を絵画にしたような図柄。

2枚目も同じ構図であり今度は男子の顔が2名共に横向きで表示されている。

その顔は引きつり、口からは長い舌を出して今にも獲物を舐めだしそうだ。


「グロ!」

「うえっ なんだ、これ…」


女子の顔はまるで魔女、服装も何故かどこかの国のドレスかそれともメイド服に近い。

だが所々のデザインがその服装が元は彼女らが着ていた洋服だと思わせる。


「え…」


そして最後の写真は俺の上に乗っかっていた男の写真、その姿はまるでマントを着た悪魔。

口は目の横まで裂け、頭には角が生え、そしてその下には俺が横たわっていて。

悪魔の手には槍が握られていたりする。


「あんた殺されてんジャン」


構図はそのようだが、よく見るとおれの腕はその槍で刺されまいと両手で受け止めていたりする。


「いやいや まだ刺さっていないし」

「でも どういう事?」

「その前に行方不明になった男ってどいつ?」

「多分あんたの上にまたがってるやつ」


このアプリ関係で今までに男子の行方不明者はいない、だがそれは断定していないだけで。

過去にはそういうやつがいた可能性は否定できない。


「もう一回アプリ起動して」

「いや、それはだめだ、何らかの拍子に写真を撮ってしまって誰かが犠牲になったら全部俺のせいになる」

「チキンかよ」

「何とでも言えよ」

「まあいいよ、これであんたも私もこの写真には写っているってことだよね」

「そ そういう事になるな…」

「じゃあなんでアタイらは行方不明にならないんだ?」

「うーん…それよりも見つかった3人の女子は全員自殺なのか?」

「自殺と言うより中毒死って感じかな」

「中毒?」

「そう、一酸化炭素中毒」

「洞窟の中…」

「いや車の中だっつー話だ」


この地区から結構離れた雑木林に放置して有った廃車の中で、3人は眠るように死んでいたと言う話。

何故かその車の密閉度は放置車にしては高かったらしい、そして何故か服装はかなり泥だらけだったと言う。

この時はそれがどういうことなのかまでは知ることはできなかった。

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