第5話 合コン

合コン


先日あんなことがあったと言うのに俺はミツルから誘われていた合コンへと来ている。

懲りないと言われればそれまでだが、今回は前回とは違うと思いたい。

そこは一応個室、個室と言ってもスカスカで一応チェーンの居酒屋らしい。

まあ完全個室でなければさほど料金をボッタくられる事もなさそうだ。

聞いたところ一人頭5千円、少しデジャビュがよぎるが。

前回はカラオケ屋さんだったが、今回は純粋に飲み会と言う形らしい、勿論俺が酒を飲む事は無い。

そして友人であるミツルと一緒に店内へと進んで行くと、そこには見慣れた女子の顔。


「あ!」

「あ!」

「何?知り合い?」

「バイト先の同僚」


偶然なんてものじゃない、先週付き合わされてカラオケ屋へ一緒に行った、現在のバイト先の同僚、山口さん。


「なんで?」

「それはこっちが聞きたい」


どうやら女性陣の一人が彼女の知り合いと言う事、そしてその知り合いというのが実はミツルの彼女の一人らしい。


「ねえ来週合コンやるんだけど、どうしても一人足りないの」

「あーしに数合わせに出ろってか!」

「お願い~、お金は男性陣が全部もつから~」

「マジ? 本当だよね おごりじゃなかったら絶交だかんね」


ややほんわかしている山口さんの知り合いである女子、一応20歳だが山口さんとはどういう知り合いなのか分からない。

山口さんは19歳で大学2年生であり、一応俺の1個上になる。

ミツルの彼女は現在、下は15歳から上は30歳まで居ると聞いている。

もちろん彼はすでに各種大人の経験は済んでいる、そして現在は複数人と付き合っていると言う噂。

うらやましい、よくその状況で修羅場にならないものだ。


「私の彼氏ミツル君」

「よろしく!」

「俺はミツルの腐れ縁、何処にでもいる佐藤ですよろしく」普通かよ!

「僕はミツル君の同級生、秋元です」まじめか!

「俺は大学の一個上だけどタメ口でOK、アキラと言いますよろしくね!」ホストかよ!

「ヨーヨーヨロシク、新と書いてアラタでっす、シクヨロ」ラッパーかよ!


一人調子の良い奴が混じっているが、多分ATMは秋元君だと思われる、確か彼 いや彼女と言った方が良いかもしれない。

LGBTQと言う文字は彼女を見て初めて俺の記憶に残った最初の人だ。

後の2名は大学のキャンパスで顔だけは少し見たことあるが、一人は確か1個上の先輩でこちらも女性に手を出すのが早いと聞いている。

そのニヤケ顔と甘い香りの香水が鼻につくが、ミツルの友人はこういうやつが結構多い、ちなみに俺はそこに含まれない。


「私は夏生、ミツル君の彼女してま~す」

「なんだよ、お前らもうデキてんのかよ!」アキラ

「そうなんすよ」

「わ 私は木梨郁美、一応ナッチャンの友人です」

「戸隠(とがくし)と申します18歳です」

「私は金城柚子(かねしろゆず)、夏生の友人」

「山口花梨(やまぐちかりん)空手2段 オッス!」

「どんびきー」

「ぎゃはは」

「うける~」

「合コンで女子がそれないでしょ~」

「良いジャン別に…」


2名は20歳を超えているためか、どんどん酒をあおっている。

まあミツルの手前、彼女宣言をした夏生さんは酔ってお持ち帰りしてもらおうと言う、そんな気がしてくるが。

俺と山口さんはゼロビールばかり飲んでいるので、周りを見て少し白けていたりする。

そして俺の隣に山口さんがやってくると、このあいだの話をすることになった。


「山口さんの友人達どうなりました?」

「それがさー、あいつら5人共行方不明になってんのよ、家や大学に電話しても出ないし」

「それやばくないですか?」

「男の方は?」

「あ~ そいつらからも最初鬼電来てたけど、バカ女5人が何処にいんのかなんて知らんし」

「そうなんだ…」

「行方不明なんだよね、なんか例の事件に似てない?」

「3か月前の?」

「うん」

「でも遺体は出てないんでしょ」

「そうだけど…」


3か月前の事件は自殺と言う線で片付けられている、だが彼女らは集団自殺ではない。

それぞれが自分の生活圏で見つかっている、死因は自殺と言うのだが、殆どが心臓麻痺や薬物による中毒症状、そして脳挫傷など。

この3つはたまたま多かった死因であり、厳密にいえば特定できなかった死因もあると言う。

細かいことは警察からの発表を待つところだが。

噂では誰か裏で復讐をしているのではと言う話も出ている。

その理由が20数人の女子全員が何らかのいじめに関わっていたと言う、元同級生らの聞き込みからそういう話が出ていたからだ。

それと全員住む生活圏が別だと言うのだから、捜査をしている警察からしてみれば訳が分からない話だ。


「ねえ、スマホ見せて」

「なんで?」

「あん時、写メったよね…」

「俺が撮ったんじゃないぜ、あのバカ男だろ」

「なんか言ってから写メしたよね?」


そこで思い出した、確か変なアプリ見つけたと言って、そのアプリを起動してから写メを撮ったのを。


「これじゃね」

「AI写真変換アプリ、なにこれ?アプリの名前無いじゃん」

「え?」

「あ それやばい奴!」


俺はすぐに花梨からスマホを取り上げると電源をオフにした。


「なにすんだよ」

「誰にも言わないと誓うか?」

「何か変な物写メしたとか?」Hなやつ…

「都市伝説 殺人アプリかもしんない…」

「うそだ~ だってあれって死んだ女の子たちのスマホには無かったはずじゃん」

「それな、亡くなった生徒の友人の写メにそのアプリの写真や動画があったんだと。そして何故か俺のスマホにそれがある」

「うそ~」

「俺も嘘だと思いたい」

「もしかして今までそのスマホで自分の写メ取っていなかったり?」

「…」

「マジ」

「もしアプリに連動していたら怖いだろ」

「あ はははは、うける~」

「好きに笑えよ」

「おい、お二人さん 仲よさそうだね~」

「あ 先輩」

「山口さんって空手やってんの?」

「おっす」

「いや それSってこと?」

「S?」

「サディスティック?」

「そうかも?」

「まじか~でもそっちも悪くないよ、俺とどっかいかない?」

「キン蹴り上等でなら良いっすけど!」

「ウッ ちょっとトイレ」


もしかしたら先輩はそういう事をされた事があるのだろう、どちらにしても無理やりでなければキン蹴りされるような事は無い。


「あいつ女の敵か?まあアーしに手を出すならそのぐらい覚悟しておかないと無理じゃね」

「山口さんってギャップがすごいよね」

「昔っから寄ってくる奴は多いけど、全員すぐ去ってくよ」

「ふーん、そうなんだ…」

(お友達以上にはならないようにしておこう)


飲み会は2時間が過ぎ、先輩はミツルの彼女の友人の後輩をターゲットにしたらしく。

終わりの方ではその後輩へ酒を勧めて、彼女は足がよろけるほどほろ酔いになっていた。


「じゃー俺、すずちゃんとかえりま~す」

「えーわたわた わたくし門限が…」

(すずちゃんトイレ行こう)山口


すずちゃんこと戸隠さんがアキラ先輩に押し切られそうになり、横から山口さんはにっこり笑って耳打ちをする。

それほどお酒を飲んでいるわけでは無かったのだが、酒に弱いのか戸隠さんの顔は真っ赤に。

そのまま放って置けばどうなるのかぐらいの想像はつく、そしてもちろん山口さんと戸隠さんは2名共にトイレに行ったきり戻っては来なかった。

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