デスアプリ

夢未 太士

第一章 エピソードその1 行方不明

第1話 プロローグ

どんな世界にも法則や規則はある、それは誰もが従わなければならないし、逃れることなど出来はしない。

どんなに我儘(わがまま)に育った子供でも、規則を逸脱し他人を傷つけるなら手痛いしっぺ返しどころか、その後の人生は転落の一途をたどることになる。


俺の名は(信之)佐藤信之、まだ18歳。

今年高校を卒業し大学に入学した。

滑り止めだが、本命はかなり難しいと言われていたので仕方のない話。

一応受かった大学はIT系でありキャンパスも割とおしゃれだったりする。

そして入学式を終えてすでに2か月が経つ。

周りは大学生の若者達であふれているが、俺は少しこの状況に違和感を感じていた。

大学がおかしいとかいう事ではない、周りの学生達も普通でありおかしいところなど無い。

問題なのは俺の中にある何かだ…


3か月前、大学受験の最中 予備校で妙な噂が立った。

女子生徒が数人行方不明だと言う噂。

まあ受験に疲れて家出なんてことも有るし、それほど問題にしてはいなかった。

それがある日 行方不明になっていた女子生徒が数人遺体となって発見された。


よくある話だと最初は思っていたのだが、実は行方不明になっていた女子生徒は俺が通っていた予備校だけではなく、都内外の10数校に渡っており、その人数は20人を超えていた。

そう 最初これは猟奇殺人ではないかと思われていたのだが、当然のことながら犯人などは未だ見つからない。

本来これだけの人数がいつの間にか死体で発見されたのならば証拠が有るはず。

勿論、確実な証拠は未だ見つかってはいないが。

どの女子生徒も或るサイトに登録していたと言う噂話が先行していた。

今時ならばアプリのサイトの一つや二つ登録していて当たり前だ。

警察が現在も調べているのだが、そのサイトは何処を探しても見つからなかった。

ではなんでそのサイトが原因だと思われたのか?

死体で発見された少女達の友人、数人がスマホを使用してサイトの画像やアプリの映像を撮影していたからだ。

20数人中、写真が残っていたのは約5件、誰でもが登録しているサイトならばすぐに問題が無いと判るのだが。

友人達の撮った写真や映像に考えられないようなおかしなものが写っていたのだ。

それは死亡した女子や行方不明になっている女子のAI変換画像。

AI画像とは単純に写真や映像をAIで加工したものだ、今では自画像をアニメや漫画化するのに役立っている、昔はプリクラなどもそういう機能があったが現在はアプリが主流になりつつある。

元の画像からかなり変身できるので、元の人物を特定するのが難しいのだが。

何故それが本人だと判るのか、それは顔だけではなく服装までも含まれていたから。

全体の容姿が行方不明になった時の本人、そのままならばどう考えてもそこに原因があるのではと思うだろう。


だが事件が発覚してから数日いくら調べてもそのようなサイトもURLも見つからなかったのだ。

そして…何故か俺のスマホにはそのサイトのアプリがインストールされている。

それが今から3か月前の事、俺は受験という事もありアプリの存在を無視することにした。

俺はそのアプリをいつの間にかインストールしていたことになる。

どうして俺のスマホにそのアプリがあるのかは俺にさえ分からない、それは俺にインストールした覚えが無いから。

いつの間にか俺のスマホにインストールされていたとしか思えない、確かに色んな迷惑メールに添えつけされて来たURLを試しにクリックしたことが無いとは言えない。

問題なのは何故俺のスマホにそのアプリがあるのかと言う事と、それがどういうことなのかと言う事。

アプリには写真をAI加工してほぼ別人のようなマンガ画像にできると書かれている。

自分でしてみたかって?いや一度立ち上げて見たが最初の画面に課金情報が出て来るので躊躇している、確かに3000円ぐらいならば払えないわけでは無いが。

知らずにインストールされているアプリなど、後が怖くて使用可能にする勇気が無かった。

ならば消してしまえばよかったのだが、ビビリな俺にはそれも出来なかった。

行方不明事件のニュースが表ざたになった時、行方不明の友人達が撮ったとみられる映像や画像がSNSサイトにアップロードされていた。

俺もそれを見た事がる、俺のスマホにあるアプリと見比べてみたが、それはどう考えても同じ物だった。

そのアプリは既にアプリストアからは無くなっており、行方不明で見つかった女子生徒達のスマホからもインストールされていたはずのアプリは消え去っていた。

そうなるとそのアプリをインストールされているスマホを持っているのは、現在俺しかいないことになる。

もし俺が自撮りしてAI加工した場合、最悪俺は行方不明になった女子達と同じように、この世からおさらばするかもしれないと言う事になる。


だが何のために誰がこんなアプリを作ったのか?

一時はそれを考えもしたが、いつの間にか記憶から薄れ3か月が過ぎた。

最初にいなくなった20数人の女子高生、彼女らの事件後、受験戦争が終わってからは行方不明になった女子は出ていない。

そして事件は全部、受験を苦にした自殺という線で処理されて行く、だが俺にはなんとなくその理由は自殺ではないと思っている。

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