第38話



「ついでと言っては何だが、もう一つ教えてやるよ」


「何だ」


「此の長い廊下だがね、あんたは言っていたね? 外へは出られない、ではなく、此の部屋からは絶対に出られない、って言うようなことを。自棄に此の部屋から出さないことに拘ってはいないか? そう思ったのさ。そして、その想像は当たっていた。此の廊下自体があんたのブレインだ。情報を入れたブロックが多すぎて部屋に入りきれなくなり、廊下へ持ち出した。今も昔も、というか生き物のやることなんて星が変わっても同じことなんだね。それとね、最初に入って来た時には、私たちの時代で言うLEDってやつかと思っていたんだが、あんたが部屋の外に拘っていることを考えると単なるLEDランプではないってね。となると此の時代の発光体か? でも、思い出したのさ、時々点いたり消えたりしているブロックがあるってことにね。そう、これは全てPCのブロックなんだ。で、一か八かの勝負に出たのさ。何とかして部屋の外へ出て、一つでもブロックを壊せた時に、あんたに変化があればビンゴさ。然しまぁ、恐ろしいほどの情報量じゃないか。そして、此の部屋に入った者は二度と部屋の外には逃さない。大切なブレインが廊下にあるなんて、そう簡単に誰もが分かるものじゃない。譬へ分かったとしても此の部屋からは絶対に出られない、大した自信じゃないか」


「それで、どうするつもりだ」


「そうだね、せっかく部屋の外へ出られたのだからお祝いでもしたいのだけどね。ちょっとばかり気分が乗らないんだ」


「どうするつもりだ」


「どうもこうも、あんたが自分の体で教えてくれたよね? 扉を開けたら、真っ直ぐに自分のブレインに体当たりさ。どうも首に関係あるブロックだったんだろうね? 体を動かすブロックを纏めて置いているとは、さすがに思えない。多分、周りは今までの情報の保存で、あんたの体には影響はしないはずだ。となると全く違う方向に体を動かすブロックがあるはずだ」


「やめろ」


 私は奴が静止する言葉など聞こえていないかのように、ポケットからレーザーガンを出してここから少し向こうにあるブロックを狙い撃ちした。

今度は、奴の右膝が震えた。


「ビンゴ」


「やめろ」


 私はランダムにレーザーガンを撃ちまくった。

徐々に奴の体が震えて動けなくなっていく。


「やめいろ、やめたくえ、ややめめ ・・・」


おお、これはこれは、今度は言語中枢を撃ったか。


 然しまぁ、一か八かの賭けっていうものも時には役に立つものさ。

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