第26話 



 勿論、目が覚めれば何んら変わらない街の通りにある私の事務所だ。

そしていつも通りの変わらない出勤さ。


 施設に着いたら着いたで変わらない仕事。

どうもこの仕事にも退屈してきたような気がするんだ。


 じゃぁ、昔の仕事に戻りたいかって?

勘弁してくれ、あっちこっちで命を狙われている事になるじゃないか。

うんざりだね。

だからってこの仕事を気に入っているかって?

気に入っちゃいないよ。

当然だろ?

直感で選んだ仕事なんだ。

これだと決めて始めた仕事じゃ無いんだ。


 昼近くになると、一人のばーさんの風呂を頼まれたんだ。


 そうさ、やるしか無いんだよ。

でも、少しおかしなことがある。

ばーさん、虚な目をして空を見てるんだ。

普段は無駄口ばかり叩いているばーさんなんだ。

それが一言も喋らずに、ただ一点を見ているだけなんだ。

唇は半開きでね。

間違いなく、いつもと違う。


 私は、気になって他の介護士に尋ねてみたよ。

ばーさん、もう1週間も出すものが出ていないらしい。

それで、施設専属の看護師が浣腸したらしいんだ。

そしたら出るわ出るわでね。


 そりゃそうさ。

普通の人間なら出るものが出てさっぱりするだろうが、年寄りってぇのは出すものを出しただけでも体力を消耗するらしいね。

ばーさん、一言も喋らないで放心状態さ。

こりゃ駄目だと思ったね。

風呂は延期さ。

当たり前のことじゃないか。

ここで無理に風呂でも入れて事故でも起こってみな?

また事故報告書を書かなきゃいけないんだ。

どうも直感だけで選んだこの仕事は私には向いていなかったように思う。


 直感。

頼りにならない時もあったんだ。

こんなことは今までになかったんだがね。

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