2、猛獣赤ずきん
むかーしむかしあるところに、『赤ずきん』と呼ばれる頭ゆるゆるの女の子がおりました。
彼女はおばあさんが作ってくれた真っ赤なずきんを纏い、猟師の叔父さんがくれた使い込まれた猟銃を携え森を闊歩し、森を根城としていた狼を駆逐し、駆逐し終えてからは次の獲物を求めて隣の村へそこで……
っていう、ヤバい女なんですよ。
いやもう、童話に必須の狼絶滅しかけてますからね。
教訓も何もあったものではありませんよ。
隣村での惨劇についてだって、ワタシの口からはとてもとても……。
誰ですかね、あんな猛獣みたいな娘を世に放ったのは。
社会的なルールとか道徳心とか、そういうの、無いのでしょうかね。
……ね?
えーだって、これはさすがにワタシ悪くないと思っているのですよ。
え、だって想像できます?
開始三秒で両手散弾銃で皆殺しだなんて。
まだルールも何も分かっていないうちから、とりあえずそこに命あるものがいたから殺す、って。悪魔だってもう少し斟酌するでしょうよ。
灰かぶりがガラス靴ナイフを出す暇もありませんでしたよ。
青髭なんて自分が死んだことにも気付いてないんでは?
まあ、こちらの落ち度は承知しております。
次回からは参加者同士を認識できないバラバラなところに配置してスタートいたしましょう。
しかし、いやはや、困りますよね。ええ、困ったものです。
これでは盛り上がりに欠けますよね。オーディエンスだって納得しないでしょうよ。
もっとこう、血で血を洗うような陰惨な場面を見せてもらわないと。
死にたくないと、助けてくれと、懇願し恨み言と血を吐いて地べたを這いずり足掻き苦しみのたうち死に至る様が見たいのですよ。
そうでしょう?
だからあなただってその席に座っているのでしょう? モニターを食い入るように見つめていたのでしょう?
興奮し、心拍数を上げ、期待に胸を膨らませていたのでしょう?
……本当に、度し難い獣だ。
おっと、失礼失礼。なんでもありませんよ。空耳空耳。
まあね、こんなこともあろうかと、ワタシ一応次の遊……んん、次の手もご用意をしております。
ええ、もちろん。
ワタシ大臣なんてこともやってますからね。
大臣とはわがまま放題やり放題な国王陛下のその権力を隠れ蓑に好き放題できる代わりにありとあらゆる無茶ぶりに対応するものでございますから、ワタシぐらいになりますと次の手のそのまた次のその次の次の次の次の次の次の次の次程度は常に用意しているものです。
もうあの娘、魔女のようなものでしょう。双子のやる気に期待大。
さて。んん。
「お集りの紳士淑女の皆さま、今宵の宴、その開宴を彩るは猛獣『赤ずきん』による瞬殺の殺戮ショー! いかがでございましたか。ふふ、もちろんまだまだその欲深で底なしな胃を満たしていないことは承知致しておりますとも。さて、その『赤ずきん』の次なる獲物をご紹介いたしましょう。果たして獲物と成り下がるのはどちらなのか。とくとご覧あれ。魔女狩りの狂った双子『ヘンゼルとグレーテル』その他諸々でございます!」
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