ワンス・アポン・ア・デスゲーム
ヨシコ
1、むかしむかしあるところに
Once upon a time…
むかしむかしあるところに……いえ、そうむかしむかしでもないあるところに、なんですけど、まあそんなことはどうでもいいじゃありませんか。
とにかく、とある深い森がございました。
その中にはとある王国が、その隣にはとある小さな村が、とある街が、なんて具合にたくさん寄せ集めたようにぎゅうぎゅうと森の中に押し込めてありました。
そんで、ある日その中のひとつの王国で、その国の住民が一斉に蜂起しました。
手に手を取って、もう一方の手には鍬やら斧やら猟銃やらを持って。
いやあ、そういうのね、非常に困るんですよね。
こういう箱庭世界みたいな狭いとこでそんなことされましてもね。
あ、そもそもその住人たちは箱庭の認識なんてないんですけど。
ええ、ええ、まあまあ。民なんてそんなものでございましょう。
いやいやだって、あなたもそうでしょう?
……おっと、いえいえ、なんでもございません。忘れて忘れて。今のなし。
ええと、どこまでお話しましたっけ?
ああ、そう、蜂起した住人たちですね。ええ、そうでしたそうでした。
まあ住人、童話の登場人物たちなんですけど。
要求はなんだったかな、ちょっとあまりちゃんと聞いてなかったんで覚えてませんが、とにかくそう、まあね、こうぴぴっとね。あるいはぱぱっと?
まあとにかくこう、お引き取り願ったわけですよ。ええ、全員もれなくざっくりと。
だって、ねえ。仕方ないでしょう?
こっち王国ですよ?
偉い王様がいて、その王様の前に武器持って来られたら、ねえ?
でもまあ確かに、寝覚めは良くありませんでした。後味もサイアク。ぴーちくぱーちく小鳥みたいに囀って、うるさいったらありません。
だからね、考えたわけです。森の中もぎゅうぎゅうだったし。
童話の存在意義は、世の子供たちに教訓を教えること。
道徳心、価値観、社会的ルールあれやこれや色々と。
でも子供なんてね、そんな詰め込まれても覚えきれませんよ。
そうでしょう?
大人だって、そんな上等な脳みそ持ってるのはほんの一握り。あとはどいつもこいつもバカばっかり。
だからね、童話なんてそんなにいらないのです。
ええ、だからこそ、あれですあれ。間引き。
でね、実際の間引きの時って強い苗を残して、弱そうな苗を抜くでしょう?
と、いうわけなんです。
まあこれは第一回目。様子見です。
とりあえずどんな顛末になることか、見守ってみようではありませんか。
こちらが手を汚すより、互いにやってもらった方がこちらとしては後腐れも……あああっと、いやいや、なんでも、いやいやいや、これはなんでもありません。
やだな、賭けとかそんなこと。
……えー、興味あります?
いいですけど、もう締め切ってしまいましたので。
こちらへの参加は第二回目以降でお願いしますよ。
一番人気は『赤ずきん』ですね。頭の螺子全部ぶっ飛んだヤバいやつですがね、ええ、ええ、お目が高い。その通り、腕は確かです。
ですが、私のお勧めは『灰かぶり』。
とんだサイコパス女ですが、これがまあ大人しい顔してどうしてどうして。
あとは『長靴を履いた猫』『青髭』『茨姫』など、なかなかの曲者揃い。
おや、時間ですね。もう始まりますよ。
モニターの向こう、あ、茨姫がこちらに気付きましたね。さすが、勘が良いと申しますか、年季が違いますね、年季が。
さあ、さあ、ちょっとお静か願いますよ。
ああ、私司会進行も務めさせていただきますので。
「んんっ。あーあー、テステス。聴こえていますね。ええ、ご静粛に。ありがとう感謝します。さて。――――――今日は皆さんに、ちょっと殺し合いをしてもらいます」
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