第四章 とにかくおかしな奴
第27話 絶対にそうはさせない
結論から言うと、イエティ(未確認生物)は敵ではなかったらしい。
この世界はエレメントで国が分かれているらしいんだけど、リスカム山の向こう側に広がる氷のエレメントの国からやって来た隣国の人で、不穏な雰囲気というか、邪悪な空気というか、とにかく、とんでもない事が起こっていると判断して、水の国までやって来てくれたらしい。
初対面は五メートル級の毛むくじゃらの化け物みたいな姿だったけれど、普段は身長二メートルと見上げるほどに背が高い普通の人。そんなアロイジウスさんは、Sランク冒険者という事になるらしい。
山の向こう側にはアロイジウスさんのように異形?に変身できる人が多いんだって。氷属性の特性だっていうんだけど、正直に言って良く分からん。
とりあえず髪の毛が白金で、瞳がアイスブルー、逞しい感じで愛嬌がある人だけど、色合い的には氷の騎士って感じだね。
僕は吸血鬼に吸血行為もされて、ほぼ死にかけていたらしいんだけど『エリクサー』を飲む事によってなんとか闇堕ちせずに助かったらしい。
この世界には『エリクサー』っていう名前の万能薬があるんだね。『エリクサー』って、エルフの族長クラスじゃないと作れない代物だっていうんだよ?凄いよね〜。
回復薬をぶっかけた僕に口移しで『エリクサー』を飲ませてくれたのがジャメルらしい。マチューがブチギレてたけど知らんがな。
リスカム山が唯ならぬ様子だった為、カーンの街からも高位ランクの冒険者が派遣される事になったらしいんだけど、到着した時には全てが終わった後だったんだよね。
もちろん、ギルド長のカミーユさんも、カーンの市長であるブリアックさんも、僕から直接話を聞きたかったらしいんだけど、エルフ二人が一通りの説明してくれる事になったので、僕は一旦、ギルドでシャワーを浴びて着替えと食事を済ませてから、宿舎に帰る事になったんだ。
流石に鬼のカミーユさんも気を遣ってくれたんだけど、そりゃあそうだとは思うよ?僕、この世界に来てまだ三日目だからね!
南の密林から来た魚くんに始まり、千匹超えのゴブリンに、10メートル級の英雄王(ゴブリンキング)の出現、からの、吸血鬼卿(バンパイヤロード)とお付きの吸血鬼が現れたんだよ?
ファンタジー要素はもうゲップだわ。
とりあえず今は人族に囲まれて暮らしたい。
「先生!今日は冒険者の人と出かけたって言うじゃないですか?どうだったんですか?」
市役所から帰ってきた中村が、好奇心に瞳をキラキラさせながら尋ねてきた。
そうなのだ、今日の僕は冒険班とは別行動で、Aランク冒険者二人と冒険に行っていたのだ。
「先生!なんか顔がツヤツヤしてないですか?」
エリクサーを飲んだからHPもMPも状態異常もフル回復しているからね、お肌もぴちぴち状態だよ。
「だけど顔色が悪過ぎじゃないですか?肌はツルツルなのに、目の下の隈がやばいですよ」
そりゃあね、ゴブリン千人斬りをした上で、英雄王(ゴブリンキング)を倒し、吸血鬼と吸血鬼卿(バンパイヤロード)を噛みつかれつつも倒したからね?体がフル回復しても、精神的な疲労は回復していないんだよ。
「先生、休んで来たらどうですか?寝た方が良さそうに見えますけど?」
「ああー・・大丈夫だよ・・心配してくれてありがとうな」
「先生、これでも飲んで元気だしてください」
僕は帰って来たばかりの算盤班に囲まれていたのだが、厨房から出てきた厨房班班長の石原芽美が、僕の前に生姜と蜂蜜を入れたホットミルクを置いてくれた。
「ああ・・ありがとう・・・」
僕が泣きそうになっていると、
「先生大丈夫ですか!」
「眼鏡は何処に行ったんですか!」
「泣かないで!」
「大丈夫?」
と、生徒が大騒ぎする。
心配する生徒たちを追い払った僕は、食堂のいつもの席でホットミルクを飲みながら、
「ステイタスオープン」
と言うと、目の前に文字が浮かび上がる。
西山康太郎 (30歳)
LV 72
HP 506
MP 89**6*
教師レベル 72
効率を求める教師 ・ いつでも何処かに逃げ出したい ・ 彼女募集中 ・ 男とキスはしたくない
称号 ・三年二組の担任教師 ・隠れた武闘派 ・導く者 ・ゴブリン千人斬り ・英雄王(ゴブリンキング)の討伐者 ・吸血鬼卿(バンパイヤロード)の討伐者 ・市民を守る者
GIFT 効率の良い攻撃 (LV 10) 吸引魔法 (LV 3) 付与魔法 (LV 6)
貫通攻撃(ドド○破を含む・ 十発同時発射 ・連続発射 ・大砲発射) 神の針 (上位種を貫くことが可能、刺したまま上空に移動可能) new神の糸 (下位であれば切断可能、上位種の拘束可能) new神力の付与(妖精の剣(エクスパンシーヴァ)のみ力の付与が可能)
相変わらず、レベルが高いのか低いのかが分からない。それと、MPが六桁の暗証番号になっている。色々とよく分からない部分が多いけど、僕は考える事を拒否して画面を消した。
その日は、夕食にシチューを食べて(厨房班の班員が手伝って作ったらしい)生徒たちを集めて勉強会をした後に、各班の班長を集めて今日の報告を受ける事とする。
各班でレポートを書いたノートを集めて、内容をチェックする。
僕はその内容を読み込みながら、生徒たちが誰一人として、臓器を嗜好品として売られたり、産み腹として利用されることがないように、あらゆる策を講じることを、校長先生と教頭先生と教育委員会と保護者各位に、心の中で誓った。
こちらの人と恋愛の末に結婚、という事なら良いけれど、子宮だけ取り出してなどという話は断じて許さない。
そんな事を考えながらノートをめくっていると、
「先生、ちょっと飲みに行かないかネ〜」
と、狐の獣人の『この人』さんが食堂まで声をかけに来たのだった。
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