先月、気管切開をして人工呼吸器を装着した。
生きるための機械を受け入れると、やはり“人智”の偉大さを思い知らされた。
人工呼吸器ユーザーになると、それ以前に比べると驚くほど呼吸が楽になり、誤嚥のリスクも半減された。
咽頭の先は、食道と気道に分かれている。
健康な人では、嚥下の際、食べ物を食道に送るときには気道が閉じて誤嚥を防ぎ、嚥下が終われば速やかに気道が開いて空気を取り込む仕組みが円滑に働く。
しかし、呼吸機能が低下していると、嚥下の際に息苦しくなり、思わず息を吸って食べ物が気道に入ってしまう。これを誤嚥(ごえん)といい、重度の摂食嚥下障害では咽頭に食べ物がつまることがあり、地獄の苦しみに苛まれる。
また、誤嚥により発症する肺炎を誤嚥性肺炎といい、肺炎のため食事がとれなくなる。
嚥下障害と呼吸不全は互いに足を引っ張り合うような状況になるのだ。
安定した呼吸は様々な自由を与えてくれ、さらなる“人智”が、ボクの世界を無限に広げてくれる。
SNSによって。
秋庭社長率いるノーマンズランドが独自開発したアイトラッキング技術は、世界シェアトップクラスと言われている。
その最新技術が搭載された端末が、いつもボクの目の前にある。
パソコン画面を注視するだけで、視線追跡入力する“人智”は、ボクに社会復帰の場所まで提供してくれた。
ボクは今、ホワイトベアーズのバイオメカニクスインストラクターの職にある。
ボクに勇気を与えてくれた仲間たちを全力でサポートする。
ボクの知識が彼らに少しでも役立てることが出来るのなら、こんな幸せはない。
ボクは愛する家族、菜都、秋時や仲間たち、秋庭社長や久住GM、そしてボランティアの人たちによって、
今朝もこんなニュースのチェックから一日が始まった。
ALSの治療薬候補
山形大など発見
〇〇年、患者の臨床試験目標
たんぱく質が異常に凝集して脳や脊髄(せきずい)の運動神経細胞が死滅し、筋肉が萎縮するにつれて、歩行や呼吸すら難しくなっていく難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」の新たな治療薬の候補が見つかったと、山形大医学部が24日に発表した。筋肉が萎縮する原因とされるたんぱく質の異常な凝集を抑制する効果が期待できるという。動物や健常な成人へ試験中で、早ければ〇〇年に患者の臨床試験に入る。
人智は常に前を向いている。
だからボクも前を向く。
運命に抗うつもりはない。
時が来たら静かに受け入れる。
でも ……
それまでは前を向いて行く。
そう決めた。
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