あぶさんと呼ばれた男2(週いち更新)…10年くらい連載しそう ^^;

t@ke

序章 【 杉村裕海 】



“ 生きる ”



それが自然なことなのか、不自然なことなのか ……


今もわからない。


以前は機械に生かしてもらうことは不自然なことだと思っていた。

愛する人たちの負担になり続ける存在なんて、耐えられないと思っていた。

悪あがきせず、運命は静かに受け入れるべきだと決めていた。



今は ……


よくわからない。



ただ、あのとき ……


すべての絵が美しかった。



やっ ! と声を起てて豪快に踏み込む伊勢谷


167キロをぶっ叩いた秋時のフルスイング


光線のような白球


鴻野、京川、キャプテンが一斉にダイアモンドを疾走した


躍動する繁宮、マルチネス、蒼野、国分、加治川の決死のディフェンス


ホームベースのクロスプレー


右手を大きく広げた審判


大きく揺れるスタンド


三塁ベース上でボクに向かって突き上げられた秋時の拳


スタンドから秋時に向かって突き出された何千何万の拳


跳び上がった元気が見せた、渾身のガッツポーズ


久しぶりに見た、実咲のくちゃくちゃの笑顔


ガッチリと握手を交わす秋庭社長と久住GM


グランドとスタンドで拳を重ね合う秋時と朔


それを見て、思わず背を向けた菜都



あのほんの短いひととき ……


かけがえのない絵の一枚一枚が、次から次にボクの胸に飛び込んで来た。



あのとき ……



ボクは生きることを決めた。


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