第28話 幸運

 ピヨが朝起きると、あのたまごに寄りかかっていた。

 覚えていないが、あの夜も心配で傍で温めていたのを思い出す。

 そうか、寝てしまったのか……と、目をしょぼしょぼさせながら、近くで寝ていたルヴナンを見る。ルヴナンも疲れ切ったように、草木の中で寝ていた。

 カタッ

 突如、たまごが背後で動いた。

 あっ!と、ピヨが振り向くと、確かに小さなたまごが動いていた。

「う、動いてる。動いているよ、ルヴナン!」

 ルヴナンを揺り起こし、直ぐたまごの傍に戻る。


 ルヴナンが信じられないようにたまごを見る中。

 おそるおそる、だが確信に満ちて、そっとたまごに触れるピヨ。

「あたたかい……」

 感動で、ピヨは涙を流す。

 無駄だと思っていた救助が、実を結んだように思えた。

 傍にカワウソが寄ってきて、ピヨの頭を撫でた。

「幸運だねえ、この子は。火が温めてあの世から返してくれたんだね」

 そういえば、とピヨは昨日の寝る前の事を思い出した。


 疲れて寝る前の事、対岸の火事が弱まっていくと同時に、この巣自体が温かくなっていた。 あの恐ろしい火の熱さが思い起こされる。

 そして、その火がこのたまごを助けてくれたのだと思うと、ぴよはひしっと卵を抱きしめた。ほんのりと、生を感じるたまごの温かさに、ピヨはホッとなる。

 ただ、助かったことにこころがぽかぽかするのを感じ入るピヨ。

 その様子を、ルヴナンとカワウソが温かく見つめていた。

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