夜しか会わないだらけた美女はどうしても俺を堕としたいらしい
でずな
第1話
人は誰しも、逃げたくなるときがあると思う。
俺、
入学してから約1ヶ月経ち。
早くも逃げ出したくなっている。
別段、学校でなにかあったわけではない。友達は数人いる。よく怖い目をしてる、と怖がられることはあるけどもう慣れてそんなこと。
そんなことじゃ、逃げ出したくならない。
が、俺はこの現実が嫌で嫌で嫌で。
逃げ出したい。
そんなことを思っていると。
俺は親に止められながらも、夜の22時頃に毎日外へ出るようになった。
遊んだりしてるわけじゃなく、近くにある人気のない公園のベンチに腰を下ろし。
自販機で買った味気のない炭酸水を無心で飲む。
やることはただこれだけ。
街灯を眺めて、無音を楽しむ。
これだけだが、俺はこの瞬間がたまらなく好きだ。
その日もただ無心で炭酸水を飲んでいた。
だが、何も変わらない日常が崩れるのは一瞬。
後ろからドタドタドタっと、忙しない足音が聞こえ。
その人はなんの言葉もなく、俺の隣に座ってきた。
美女だ……。
小顔で黒髪ショートヘア。
スーツを着てるから社会人だってことはわかるけど……すごい酒臭い。
顔は真っ赤。心なしか、さっきから小刻みに体が揺れている。
酔っ払いにはまともな人なんているはずがない。
美女で気になるけど、逃げよ。
そう思いすぐ立ち上がろうとしたが、時すでに遅く。それを止めるかのように、美女は俺の太ももに手をおいてきた。
「なん、ですか」
恐る恐る口を開くと。
美女の呆けた顔が俺に向けられ。
「君、お姉さんに喰われてくれない?」
「…………え?」
何言ってるんだこの酔っ払いは。
やっぱりまともな人なんているはずがなかった。
「んむぅ〜? 誰なの君」
「俺の方こそ聞きたいですよ」
「しっかたない。……お姉さんは1時間前の21時まで会社で残業してて、ついさっき飲み屋から出てきた労働者だせっ!」
酔っぱらいお姉さんは白い歯を輝かせ、地面においていた缶ビールを開け、ゴクゴク豪快に飲み始めた。
21時まで残業って……。すごい仕事のストレス溜まってそうだ。
俺、毎日逃げ出したくなってもいいから一生高校生やってたい。
「ほら次は君の番。私に喰われる予定なんだから、何をしてる人なのかくらい知りたいなぁ〜」
「……俺高校一年生なんで、もし手を出したら捕まりますよ」
「え。君、高校生だったんだ」
「はい。なので俺も女性に迫られるのは夢見てることなんですけど、無理です」
「まぁ高校生も社会人もそこまで変わらないからいっか」
酔っぱらいお姉さんはそう言って、ワイシャツのボタンを外し始めた。
「だから無理ですって! ここ、交番近いんでお姉さんすぐ捕まっちゃいますよ」
「じゃ。バレないところいこっか?」
その後中々引いてくれない欲求不満な酔っぱらいお姉さんを、なんとか抑えることに成功したが。
次は缶ビールを一気に飲み干し、ただの酔っ払いになった。
「だぁ〜かぁ〜ら! 残業してるのに残業代が一切でないクソブロック会社をしょっぴけよ法律!」
「いつもお疲れ様です」
泣きそうな声で声を荒らげられ、無意識に言葉が出ていた。
「そう! 私はお疲れなの。でも明日もまたサービス残業……。あぁ〜君を喰えば頑張れるのにぃ〜」
酔っぱらいお姉さんの声がデカいせいで交番から警官がこっちをジロジロ見てるのに、よくそんなこと口走れるな。
高校生が夜中こんなところにいたって知られたら、色々面倒なことになりそう。
よし。逃げるか。
「喰われはしないんですけど。明日もまたここにいると思うので、よかったら会いましょ。俺も高校頑張るので、酔っぱらいのお姉さんも頑張ってください」
「うぉー。絶対退職してやるぅー」
酔っ払いのお姉さんの嘆きを聞きながら、公園のベンチを去った。
俺は昨日、酔っ払いに絡まれた。その衝撃のせいであまり眠れず、そのまま学校に行って眠い。
早めに寝たいが、昨日した約束を果たすため22時頃に家を出て、同じベンチに座っている。
……全く来る気配がない。
もう炭酸水の量は4分の1。
「まぁ酔っ払いだったし」
流石に忘れてるのか、と思い立ち上がろうとしたとき。
街頭のない正面の暗がりから足音が聞こえてきて。
「君、お姉さんに喰われてくれない?」
酔っぱらいじゃないが、見覚えのあるきれいなお姉さんが目の前に現れた。
「喰われないなら堕ちて?」
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