さよなら異世界
霜花 桔梗
第1話 死別、そして気になる、あの女子
私はこの世界に絶望していた。くだらないことの繰り返し、私はぼんやりと死を望んでいた。
そこに現れたのが死神のマベルであった。彼女は言った、異世界のテルーナで暮らさないかと。それは死神のマベルとの出会いでもあった。彼女の妖艶な美しさひかれて恋に落ちる。私は異世界で王国の聖騎士として働き。死神のマベルと永遠の愛を大樹の木の下で永遠の愛を誓った。
なにもかもが上手くいっていた。しかし、マベルは死んでしまった。マベルの葬儀の後で私は元の世界に帰ることを決める。
そうれは二度目の絶望であった。
目覚めると病院のベッドの上だった。話によると交通事故で意識不明でいたらしい。その後、体は順調に回復して高校に復学することになる。マベルの居ない異世界などにはもう興味は無かった。
そして、異世界から戻って来て残った能力が物に触れると残留思念が感じられることだけだ。私は何故、死神のマベルが死んでしまったのかを考える日々であった。
死神の解釈の違いなのか?
この現実世界からテルーナに導くから死神と呼ばれているのかもしれない。そんな事を思いながら、ふと、キッチンに置いてある母親のスマホに触れる。知らない男と嬉しそうに自撮りしている場面が浮かぶ。
不倫か……この家庭は崩壊寸前のはずが、世間体などが影響して成り立っている。
この触れると残留思念が見える能力はなんの価値もない。マベルの死から生まれた忌む能力であった。
***
私は高校の屋上で空を眺めていた。
「あ、ぁ、あのー達也くん、今、いいかな?」
クラスメイトの友美が声をかけてくる。告白か?私はマベルを失ってそんな気分ではない。
「宗教の勧誘なら間に合っている」
少し意地悪だったかな。
「何で解ったの?」
はい……?
「まさか、告白でもされると思ったの?ダサい男子の分際で」
「……」
私が黙り込むと友美はヤレヤレとなり。神について語りだす。本当に宗教の勧誘であった。
「ここで主は申したのです」
はいはい、死神が居て異世界が有るのなら神様もいるでしょね。私は適当に返事をして友美から離れるが付いてくる。
「何故、逃げるのです?わたくしが貴方を救おうと言うのに」
「イヤ、そう言うのは間に合っているし」
「貴方は孤独でなくて?」
まあ、ざっくり言えば孤独だ、しかし、それを救ってくれた。死神のマベルは死んでしまった。
「私と契りを交わして一つになるのです」
エロい表現だな。私が、ただの欲求不満なだけだな。
「ポっ、何を言わせるのです。私はただ貴方を救いたくて」
コイツもコミ障害で友達が居ないのか。不意に意気投合して話し始めるのであった。
私は友美と一緒に黒板を掃除して綺麗にしていた。先生の使った後で次の先生が気持ちよく使う為に生徒が掃除して綺麗にするのだ。
うん?
静電気の様に黒板消しから残留思念が見える。私はこの能力は異世界から帰還してから身についたモノだ。剣術に才能を見出されて異世界では聖騎士として活躍していた。それはただの騎士ではなく聖騎士だ、違いは簡単、聖女に洗礼を受けた者だけが聖騎士に成れるのだ。多分、その洗礼の関係でこの能力に目覚めたらしい。
そして、見れたのは職員室での一コマである。
『結局、麻雀は禁止ですか?』
『ああ、今の時代、仲間内でも禁止らしいですよ』
担任と数学の先生が話している。コンプライアンスですか。同情はしない、先生なら当然のことだと思うからだ。
「何、ほっーと、しているの?」
友美が声をかけてくる。おっと、今は黒板の掃除中であった。
帰り道、黄昏が闇に呑まれていく途中のことである。私は楽園を追い出された悲劇のヒーローの気分でいた。確かに異世界に転生してマベルと愛し合ったのだ。マベルはテルーナ王国の案内役であった。死神に案内されたのだ、私は死んだと思っていた。
しかし、くだらない現実からの帰り道であった。学校が牢獄ならまだいい、ただの暇つぶしであった。得るモノは無く。ただ時間を潰すのであった。最近の授業はパズルの解く練習である。大学入試がパズルを解くのに大きく変化したからだ。人生に本当に必要な力が着くかはかなり疑問だ。
「た、つ、や、君」
後ろから友美が現れる。
ふ~う、少し落ち着いた。
好意と言う感情には人を落ち着かせる効果があるらしい。
友美とはバスが同じで途中まで一緒であった。
「えへへへへ、達也君は好きな人いるのかな?」
大胆だな、告白ともとれる発言だ。私は異世界の事など信じてもらえないと思い。嘘をつく事にした。
「外国に短期留学で知り合った女性がいる」
「えー遠距離?」
「いや、死んだ。彼女が死んだからこの世界に帰ってきた」
この世界に帰ってきたは不味い表現だったかな。そんな簡単な事でうろたえていると。
「ごめん……」
友美が下を向いて謝る。少し気を使わせてしまったかな。別に友美が悪い訳ではない。
「気にするな、もう過去の事だ」
しかし、その言葉は嘘であった。せめて、マベルの遺品があれば私の能力で残留思念が見えるのに。この残留思念が見える能力はなんの役にもたたない。異世界で聖騎士をしていたならもっと役にたつ能力が欲しいものだ。
はーあ……。
私が大きくため息を吐くと友美が寄ってくる。
「その留学先の恋人にまだ未練があるのね」
簡単に言ってくれるな。これでも頑張って生きているつもりなのに。友美は更に近づき、シャンプーの香りなのか甘い匂いがする。私が困惑していると。突然、離れて。
「達也、キスしようか?」
はい?この娘は何を考えているのだ?私がマベルに未練があると知りながら。キスをしようだ?
「えへへへへ、困っている、達也君はカッコいいから恋なんて直ぐできるよ」
やはり、告白なのか?
「私はね、困った表情の達也君が好きなの、恋愛感情は無いからだから安心して」
この友美と言う女子は小悪魔なのかと思う。
「でも、この気持ちは何?達也君と一緒にいると、心が落ち着くの。きっと、これが恋なのね」
友美は更に離れて意味深な発言をする。やはり、異性として私を見ているらしい。少し安心した。これで私に興味がないでは小悪魔過ぎる。
「だから、勝つの、追憶の恋人に私が勝って、恋人の存在になるの」
そんな話をしていると、バス停に着く。
「バス、途中まで一緒だったよな」
不意に友美は下を向いて。
「寂しいな」
その後、バスに乗ると友美はワイヤレスイヤホンを取り出して離れて座る。
何だ、このシーソーゲームは……。
私は少し勇気を出して。
「そのワイヤレスイヤホンの片方貸して」
「バカ……」
友美は恥ずかしそうにワイヤレスイヤホンの片方を渡す。
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