日曜日のパンケーキ

宇未

第1話

子供の頃、週末の朝ごはんが何だったのか

思い出せない。


それもそのはず、子供の頃

私は決まって週末はお昼頃まで寝ていたのだ。


だから朝ごはんの思い出がない。


イギリスに来て、生活費を節約するために

オーペアという子供の宿題や家事の手伝いをするという

住み込みの仕事を始めた。


だから必然的に朝ごはんは子供たちと

共にすることになった。


ここでの体験が、私の朝ごはんの思い出になる。


このお家では、日曜日の朝は決まってパンケーキを食べる。

パパがホットプレートで焼いてくれるのを兄妹と私の3人でじっと見つめる、私にとってはなんだか気まずい時間。

だから、「早く焼けてー!」

と思う理由は子供たちとはちょっと違った。


プレートにバターを乗せて、それがじゅわーっととろけたら

パパが手動でがんばって泡だててふわふわになったメレンゲと、

パンケーキミックスを混ぜ合わせたものをゆっくり流し込む。


表面に泡がプツプツ現れたらひっ切り返し。

たまに失敗して形が崩れると、子供たちからのブーイング。

パパ業って本当に大変な仕事だなって心の底から思う瞬間。


ここ崩れてるから私ここ、僕ここがいいって焼ける前から取り合い。

パンケーキを指さす手が、熱々のプレートに触らないか心配で思わず声を荒げるパパ。


そしてケーキ入刀の瞬間は思わず息も止まる。


だってこれに失敗したら、大きい小さいで大戦争が起こるんだから。


歪な扇型になったパンケーキ。


まだ温かいから、バターを塗るとすぐにとろける。

その上にメープルシロップをたっぷりとかけるのが子どもたちのお気に入り。


あえてシロップかけずに、生地の卵の風味を味わってみるのが私のお気に入り。

(実際は子どもたちに遠慮してかけれないっていうのもあるけど。)


優雅とは程遠い、これが私の日曜日のパンケーキ。

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日曜日のパンケーキ 宇未 @umichoco239002

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