おまけ〜女の子の一念、富士山の噴火を止める

 これは御冷のスーツを設計した棺という名の人の記録。


「富士山を噴火させるか。それを止める担当を…無能の私が…」

 

 私は日本最大の秘密組織・不知火の幹部をしている。

 今、日本は最大の危機を迎えている。

 私のいる日本の不知火と同様に世界を股にかける秘密組織・大聖堂が眠れる何かを起こした。


 恨み言を言えば…我々はこうなる前に様々な準備と対策を行うつもりだったが…狂った男と馬鹿は予定を一足飛びにし、準備が出来てない状態でこの日を迎えてしまった。


 蘇ったその何かは…ある年のクリスマスに4人の使徒を使い分散し、日本を襲った…島国だから?理由は分からないが、この国を絶望に陥れ信仰を高める。

 報告によると…狂った男と馬鹿は使徒2人を開放し、残る何かの本体と、東京湾で対峙しているらしい。

 あの2人なら勝てるだろう。

 かつて片割れの馬鹿、【破壊】と対峙した私だから分かる。


 だが…残り一体は人に寄生しておらず、山に寄生していた。

 噴火すればもっとも影響のある日本最大級の休火山。


「富士山か…そして光躯と言われる天使が7体…二体ですらギリギリ勝てたのにな…」


 せめて戦友のアマテラスがいれば…とは、言うまい。

 彼女も本体との戦いでそれどころじゃないだろう。


「パイロットに告ぐ。私が搭乗後、火口に落とせ。爆縮にて全力の火力をぶつける。火山が噴火すれば私達の負け、光とやらが死ねば我々の勝ちだ」


「棺様…其れはあまりに分の悪い賭けです。火口近くには光躯がいます。それに…現在火口近くは吹雪の上局地的に音や振動がほぼしません、およそですがマイナス100度近くになっています。機動鎧【棺の柩】はその温度では動けません…」


 ギリギリと…歯噛みしている音が…自分でも分かる。

 この大事な場面で…自分は何も出来ずにいる。

 何か策を…何でも良いから…


 火口をヘリから睨めつけていると上から吹雪く山頂に向かって何か向かっていた。

 百足?ムカデか?アレは?

 何やら巨大な多脚の戦車のようなものがズンズンと山頂に向かっている。

 なにか聞こえる…いや、見た事あるフォルムだ。


『なおなおきゅ♥なおなおたきゅ♥ピンチィー♥ヒロピンチィー♥』




 どういう事だろう?火口を守っている天使、光躯と呼ばれる数メートルの人形が、巨大人型ムカデに襲い掛かる。

 しかし、光躯がその手前で止まった…いや、凍ってる。

 

 十年近く前に、一般人を死なないようにという強化スーツの依頼をされた。

 コードネーム・コールド★プッシーだっけか?

 共同開発した馬鹿は意味不明な能力ばかり付けていたが…私は尊敬した人の、能力が無いという事は、未来が決まっていないという言葉と…

 愛する人の言った…無能は、無限であるという言葉。

 私はこのスーツに…その言葉の想いを形にする事が出来る様にしたかった。


 私の想いをコンセプトに作った、強化スーツを着た私と同じ一般人が…私の届かなかった場所を歩いている。


「アレはウチで開発したやつだ、回線繋げられるか?」


 回線が繋がる…過酷な環境下でも繋がっている強固な回線、電波ではあるが何か強い力で補強され繋がっている。

 何者かに操られているのか?回線に侵入する。


 そこで行われていたものは…



『ナオタきゅ♥みてりゅー?♥わらしもうでゃめぇ♥こんにゃピンチィーでぃやめぇ♥』


『馬鹿野郎!ぢょっどいっでぐるって言ったじゃねぇかよぉ!嘘つくなよ!死んだら許さないからなっ!』


『しょんなぁ♥むりでゃあよぉ♥わらしむりぃ♥しゃいごになおにゃんのぽこてぃろんみぃしてぇ♥』

 

『ごんなもんいくらでもみじてやるよぉ!だがらぁだのむがらがえっでぎでくでぇ!』


 何だこれは?お互いがビデオチャットの様に映っているが…女はまるで氷の檻のような場所で髪から顔、全身が白く霜のようなものが張り付いている…そして…男は泣きながら公園で股間を曝け出している…何をやっているんだ?


―――出歯龜はやめて下さい――――


 え?女が私に気付いている?それに普通に喋っているが…アマテラスの能力か?心に直接来る…


―――私と直太君、2人だけのドラマを邪魔しないで下さい。今盛り上がっているんですから―――


 …だってもう駄目だって言ってたじゃないか?


―――勝利なんて確信してます、だって…直太君がプロポーズしてくれたから♥―――

 

 何言ってるんだ?このままだと東日本は…


―――同じ事を言うのは嫌です、黙っててもらえませんか?駄目押しもしなければいけませんし―――


『じぇったい♥きゃえるかりゃ♥やくしょくだみょ♥』


『本当が?…お前ががえっでごないど…オレは…おれはぁ…うぅ…グス…』


 富士山の火口、それに中腹からも光が漏れ出している…もう不味いぞ?


―――うるさいですね、タツさん?この旦那挿入クソコケシ女、こっちもやれ馬鹿。何とか卿の声、聞こえたぞ、お前のせいだ旦那NTR女、おい―――


 火口にいるコールドプッシーの上から巨大な拳が無数降ってきた…あれは東京湾にいる藤原龍虎の?


―――良し、アレは消えました。後は噴火を止めるだけ、簡単ですよ。彼が見てるから。私は彼の言葉の代行者ですから―――


『なおてゃくん♥いった♥アレを言ってゃ♥わたしはあれからずっとしゅき♥』


―――天使なんてのはあの時の彼だけ、神様なんてのはあの時の彼だけ、今もなお、彼だけが―――


『御冷ぁ…あれってなんだよ…』


 お前らは…何の話をしてるんだ?




『おんにゃのこ♥なにやってぃえんちゃ♥いいきゃげんしょ♥』


―――『女の子に何やってんだ!いい加減にしろよ』あれからずっと…私に見えているのは直太君だけ―――


 先端の多脚戦車のようなものがいよいよ巨大なムカデの頭となる。

 余り大きなムカデ…この国では水棲の巨大ムカデをリュウジンと名付けるらしいが…


 それから…巨大なムカデ…リュウジンは富士山に巻き付き火口に頭から突っ込んだ…最早、規模が大きすぎて分析が出来ない…そして一瞬…いや何秒か…富士山の周りから音が…光が…振動が…全てほぼ消えた…絶対零度の世界。

 一瞬で富士山の熱量か収まった。


 人が想いだけで作る絶対零度の世界…激情から、自らの国を作り、軍事国家となり、火力こそが全てになっていた私の新しい…夢…


 相手を無効化し、自らは死なない平和な世界…そんなものは不可能だと思った。

 

 それでも彼女の想いは届いた…彼以外は認めない嫉妬心と独占欲が作る寂しくも2人だけの世界、その想いの結果。


 彼が彼女だけを選んだ時の間、こおりの世界が訪れた。


「全部隊、光躯の遺体は無視しろ!死んでもコールドプッシー…いや…リュウジンという英雄を救い出せっ!」




―――――――――――――――――――――――


 ある年のクリスマス。

 人知れず、この国をとある宗教団体のドラッグによる強制的な信仰から救った英雄達がいた。


 ある者達は首都で抵抗したが手も足も出ず、結局1番良く分かっていない化け物が暴れまわったあげく巨大化し、ここぞとばかり穴という穴に色んな物を入れ更に暴れ回り、収拾がつかなくなると結局別の者が洗脳で周りの記憶を消し、暴れ回る際に犠牲になった、穴という穴に入った化け物の旦那はその時間だけ記憶喪失になった。


 その同時刻、日本において最大の軍事力を持つ者が富士山噴火という圧倒的な自然の前に絶望した時、その事に全く興味の無い変身ヒロインが彼氏の気を引く為に、ピンチになれるからという理由で富士山の噴火を止めた。


 その偉業は誰にも知られていない…が、コールド★プッシーは愛する人との子供が出来るまでその後も、最強と言われる幽霊と虫が大嫌いな元女探偵に挑み続けたという話。


『わたすぃー♥直太君と♥えっつー♥したい♥』



 case1:幼馴染は変身(最凶)ヒロイン、強制的に間男になった男 完

 


 ※最期は滅茶苦茶すいませんでした!次回から短編でやったcase2にはいりまぁす!

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