空色杯6-2

mirailive05

銀河鉄道の宵の口

 「私の名前はチャーリー・リンドバーグ、宇宙をまたにかける著名な冒険家だ」(自称)

 この惑星を発見して降り立った時、私は歓喜と哀愁に打ち震えた。

 惑星の静止衛星軌道にうち捨てられたように在った、朽ちた宇宙ステーション。そこにレールの痕跡を見つけたときから、まさかという思いと、そうであれという思いにハーレーVツインのエンジンシャフトのように揺さぶられるようにして、わたしは降り立った。

 スペースクルーザーから出た私が最初に見たのは、朽ちずに取り残された都市の廃墟。そして、銀河鉄道らしき空へ舞い上がるレールとステーション&ホームの跡。

 そうだ、これはまぎれもない銀河鉄道の痕跡なのだ、ロマンの象徴だ。いやコストや合理性を考えればロマンしかない。

「どこの阿呆だこんな手間暇かかるもの造ったの」(おっとつい本音が)

 わざわざ地上から発進をして、連結された複雑な重心を持った車体を無駄に制御して、気密性や宇宙線と格闘しながら宇宙を旅するだけのために作られた無駄遣い。 

 無茶苦茶になるであろう軌道計算。アメ車よりアポロより悪い燃費。エリート技術者をすりつぶすように使い捨てるであろう業務運営。考えただけで気が遠くなる。

 いかような文明と、それを作り上げた知性が存在したのだろうか。すごいとしか言いようがない。(いろいろな意味で)

 それを実現した酔狂な気質を思いやる。やはりそこには本当にロマンしかない。

 暇を持て余して銀河冒険旅行なんぞしている自分には、親近感しか湧かない。まったくもって愛してやまないロマン莫迦だ。

 しかし何ということか、いま彼らはいない。敬愛すべき彼らはどこへ行ったのであろうか。ご苦労なことに線路わきには花まで植えていやがる。(無駄に芸が細かいな)

 じっと花を観察してみる。

 彼らを送ったであろう花だけが、その酔狂さを物語っていた、ありゃ?

 「うぇ、これ造花じゃないか!?」

 私はしばし、空を見上げて考え込んだ。

 まさかこの惑星も?

 いや恒星までも……

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