第2話 生霊 ~舐犢之愛に導かれた母親の妄念~
親友の想い人
今夜は
陰が極まり、陽に転じるこの夜は、陰と陽が
深夜にもかかわらず、郊外の森林がにわかに鳥たちの
鳥たちは何か邪悪な霊的存在の気配を感じとったようだ。
それは常人の視覚で
それは一瞬の出来事で、森は再び静まり返り、木々の
◇◆◇
普光院
彼女の霊力を封じていたブレスレットが砕け散ったその後、祖父の覚元に命じられて日々修行に明け暮れる日々が続いていた。
最初は
「その辺の小物ならば自分で
彼女は、毎朝日の出の前に起きて、寺の本尊の大日如来が安置されている本堂でお勤めをする。寺には、立派な毘沙門堂もあるのだが、これは
覚元の勧めにより、お勤めの前にヨガをして自律神経をリラックスさせてから、本番の
最後の仕上げに
調伏に関する知識・技術は、学校が休みの日に集中して覚元から厳しく仕込まれていた。
凜月は、今朝も
家ではだらけた生活を送っているし、学校へ行けば女子の尻を追いかけ回すか、男子とけんか沙汰を起こすか……。とにかく、トラブルメーカーなのである。
だが、
……ということで、ある程度
そして、昼休み。
凛月は、仲良しの女子たちと雑談をしていた。高校生女子の一番の話題といえば恋バナである。
一時期、凛月も
「あたしさあ、気軽に行けるお洒落なカフェデートに憧れてるんだけど……」
「そうよね。雰囲気のいいレストランでディナーとかだとお金がかかっちゃうし、かといってファミレスっていうのもねえ」
「夢を語るのもいいけど、その前にいい人を見つけることが先決でしょう。ねえ誰かいい人いないの?」
皆にめぼしい反応がない中、いつもはお調子者で話題の中心にいる京華の様子がいつになく静かだ。
「あれっ? 京華。今日は静かだね。なんだか怪しくない?」
「そう言われてみれば。ねえ。本当は何かいいことがあったんじゃないの? 白状しなさいよ」
それまでおとなしくしていた京華は、相好を崩した。
「えへへ。実は気になる人がいるんだけど……」
「えーっ! 誰っ。学校の人?」
「お父さんの会社にインターンで来ている大学院生のお兄さんなんだけど……すごくイケメンで、頭もよくて、仕事もすごくできるって、お父さんもびっくりで……」
その日からしばらくの間、京華の恋の話で盛り上がった。
しかし、十日ほどたった頃。
いつもの雑談のさなか、京華に話題が振られ、普通に
誰あろう凛月だけは、京華が無理に笑顔を作っていることに気付いた。
そこで放課後、誰も見ていないところを見計らって、凛月は京華に聞いてみた。
「ねえ。京華。何かあったんじゃないの? 私で良ければ力になるよ」
「もう、凛月にはかなわないなあ。実は彼の体調が悪くて病院へ行ったんだけど、原因がよくわからなくて。結局は精神的なものだろうということで心療内科のお薬をもらってきたんだけど、それも効果がないみたいなの」
「彼って、ナイーブな性格な人なの?」
「彼は、お父さんの会社の本町専務の
(なんだか
「もし、よかったらなんだけど、私の家でお護摩を
「心配してくれてありがとう。お父さんに言ってみるね」
このことが、イケメンインターンの本町
--------------------------------------
【
後漢の楊彪の子、楊脩は魏の曹操に重く用いられていましたが、のちに曹操に殺される。のちに楊彪は、曹操にこう語った。
愧無日磾先見之明、
愧はづらくは日磾ジッテイが先見の明無くして、
猶懐老牛舐犢之愛
猶ほ老牛舐犢の愛を懐くを
これを聞いて、曹操は思わず態度を改めたという。
※ 金日磾(自分の双子が武帝のためにならないことを予見して、わが子を殺した)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます