第15話 全島封鎖!

「え゛えええええ~~~!」

広央が悲鳴を上げた。


「お兄さん封鎖って?何がどうなるの!?」

カナミも思わず叫ぶ。


神之島には様々な来歴の人間が訪れる。


島も基本的には鷹揚に受け入れてはきた。

が、全ての人間が善人とはいかないものだ。


島に入り込んで好き勝手に犯罪行為を重ねた挙げ句に、逃亡しようとする輩もいる。


そんな不届き者を逃さず捕らえる為に発動されるのが“全島封鎖”だ。


島と本土とを結ぶ船を交通船・観光船問わず前面運航ストップにする。こうして完全に島を孤島にし、袋の鼠のごとく不心得者を追い詰めるのだ。

 

ただし、めったなことでは行われない。島民の生活に多大な影響を及ぼすからだ。そしてこの命を下せるのはただ一人。島の絶対的権力者、総代だ。


広央が叫ぶ。

「そーだよ!全島封鎖とか総代しかできないはずじゃん!一体誰がやって…」


『尚、本日総代がよんどころの無い事情で不在の為、代わりに副総代のオレが発令する!』


街の総代事務所では、マイクに向かってその副総代であるユキが叫んでいた。

「ヒロ!今すぐ出頭しやがれ!でねえと今日がてめえの命日になるぞ!以上!」


「ユキ兄…これじゃヒロ兄の評判が落ちちゃうよ…」


恐ろしい程の怒気を発するユキの背中に、和希が恐る恐る話しかけた。それよりさらに恐れる猪狩隊隊員たちは、この鬼の前隊長の背中を固唾を呑んで見守る。


「評判もなんも、カオを街じゅうに晒されて“ココミナ”にアップまでされちゃって。もう総代どころか、ヒトとしてアウトっしょ、広央サン」             

空気を読まずに喋りまくるヨリに、ユキが渾身の掌底打ちを喰らわせる。

ヨリの目が完全に飛んだ。


「そうだ知広と拓海!あの二人はどこ行ったんだ?勝手に総代の顔写真晒しやがって、あの二人もタダじゃ済まさん!」


気絶して倒れ込んだヨリの身体はピクリともしない。

それには一切構わずユキが言い放った。


「そ、それよりユキ兄…全島封鎖は長くは出来ないんだから。島のみんなの生活にも関わってくるし…こうなったら一刻も早くヒロ兄を連れ戻さないと」


ユキがちらと腕時計を見た。現在15時3分…刻一刻と、デッドラインは近づいて来る。もはや一刻の猶予もない。

「そうだな、行くぞ…俺がヒロを殺すか、俺がおマキに殺されるか、だ!」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る