第10話 秘密の抜け道

「どおりゃあああああ!!!」


広央が動けなくなった加奈美をおんぶして、全速力で走り始めた。

「行くぞお、カナミちゃん!」

「え、お兄さん、うち結構重いよ!?」

「カナミちゃん、この島には一つだけ譲れない“ルール”があってね」


金に目がくらんだ賞金ハンター軍団と反社グループは、情け容赦なく追いかけてくる。


「事情はどうであれ、逃げ込んできた人間は、もう島の人間」

広央は続けて言った。


「島の人間は見捨てない」

さらに広央は全速力で走る。

「絶対にな…!」


加奈美をおぶったままの広央は、ビルの角を曲がった。

追っている連中もそのまま追いかけて角を曲がったが…。


「お、おいどこ行った!?」

「急に消えたぞ!!」

「どこ行った、あの女ぁ!」


二人が逃げた先は、ビルの壁で行き止まりになっていた。

しかし二人は何処にもいない、忽然と姿を消していた。




「ふー、やれやれ。」

黴臭さと、じめじめした湿気が辺りに充満している。時折ネズミの鳴き声が聞こえてくる。

広央と加奈美がいるのは、広く大きなトンネルのような空間だ。わずかに設置されている電球で、かろうじて中の様子がわかる。


「ちょ、お兄さん、なにここ…」

加奈美がおそるおそる広央の背中から降りた。靴にべちゃっと泥がついて、思わず顔をしかめる。


「ああ、地下坑道だ。昔は水路として利用してたんだよ」


先ほど加奈美をおぶったまま、広央はビルの角を曲がった。

ビルの非常階段…が実はフェイクで、横にずらすと坑道の入り口がある。

坑道内にすべりこみ、中からの仕掛けで非常階段をもとの位置に戻す。

後から来た人間には、広央たちが忽然と消えたようにしか見えない。


「じゃ、カナミちゃん。ちょっと歩くよ」

「ちょっと、暗いじゃん、どこ行くの!?」

 「大丈夫大丈夫、ガキの頃散々探検したから。中で迷って3日間出られなかった時は、さすがにヤバいと思ったな」


広央は勝手知ったる様子で

、すたすたと進んでいく。

しばらく歩き続けると道がわずかに明るくなってきた、天井にわずか空いている隙間から光が差し込んでくる。


「ここだ」


広央が壁に設置してある梯子を指さした。

梯子を登り、天井に取り付けてある小さな開閉ドアを開けると…そこは街の外れだった。


先に出た広央が、梯子を上ってくる加奈美の手を引っ張り上げた。

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