第8話 緊急放送!

突然、街のいたるところに設置されているスピーカーというスピーカーから大音響が流れてきた。

思わず耳をふさぎたくなるような大音量で。


広央が思わず叫んだ。

「うおおっっこの声は!?」


街の人間はみな立ち止まって、この大音量が何を伝えようとしているのか一斉に耳をすませた。


『こちら総代事務所、こちら総代事務所。ヒロさ~~ん!ちょっと聞こえてる~!?』


「ちょ、ちょっと、ちーちゃん!何やってんのあの子ぉ!?」

突如としてスピーカーから流れてきた知広の大音声に、広央が驚愕した。


「何この音、超うるさいんですけど…」

いつの間にか加奈美も後を追ってきている。


『ヒロさん!逃げても無駄だからね!とっとと就任式に戻る事!ご通行中の皆さん、ヒロさん見つけたら捕まえて、ここ総代事務所まで連行して来てね!以上!!ピーンポーンパーンポ~ン』


人々はこの珍事に一瞬ぽかんとしていたが、放送が終わったらさっさと向かうべき場所に足を運び始めた。


「ふう、ちーちゃんもやってくれるな…しか~し!、君は一つ大きなミスを犯した」

広央が不敵な笑みを浮かべた。


「お兄さん何笑ってんの?キモい…」


(ちーちゃん、ヒロさんは当分戻らない気満々よ?そしてキミは“見つけたら連行してね”などといったが、ハリウッドスターじゃあるまいし、まだ就任式前で、ヒロさんの顔なんて街の誰も知らないのよ?写真でもばら撒かない限り、こんな放送無駄無駄!!)


『ピーンポーンパーン~ あ、ヒロさんの顔コレだからね!』


次の瞬間、街のあちこちにある街頭ビジョン、大小問わず全てのビジョンに広央の顔写真が映し出された…。


広央が悲痛な声を発し、街の人々はスマホの着信に気づいた。

島の公式アカウントから広央の顔写真、背格好・服装の情報及び、見つけた際の連絡先、謝礼金等々が詳しく配信されていた。


「あれ、なんかお兄さんの顔じゃん!」

加奈美が街頭ビジョンを見ながら叫んだ。

と同時に、広央たちの周りにいた人たちがザワザワし始めた。


「あれ、もしかして…」

「そうじゃね?カオ似てんじゃん」

「やっべ、謝礼金〇〇万円だって!」


謝礼金に目がくらんだ群衆が、またたく間に広央めがけて走りこんできた。


「おい、あの女じゃん!」

騒ぎに引き付けられた群衆のなかに、先程の反社グループがいた。


こうして広央は賞金ハンターと化した群衆から、加奈美は反社グループから、二人して一緒に逃げるハメになった。


「てかさ、なんでよりによってあの写真よ!?運転免許の一番イケてない写真じゃん!」

「そんなことないよ、お兄さん実物よりいいよ!」

「何それ傷つくわ!」


二人は必死になって逃走したが、さすがに加奈美のほうに体力の限界がきた。

「お兄さん、うちもうダメ…走れない…お兄さんだけでも逃げて…」


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